オール電化×太陽光で光熱費ゼロは可能か|「ゼロ」の意味と達成の条件
オール電化と太陽光発電を組み合わせると「光熱費ゼロ」も夢ではない、と言われます。ただし、その「ゼロ」は多くの場合、1年間の収支の話で、毎月の請求がゼロになるわけではありません。ゼロの意味と、近づくための条件を整理しました。

はじめに
オール電化の家に太陽光発電を付けると「光熱費ゼロも可能」と紹介されることがあります。ガスを使わないオール電化なら、光熱費はほぼ電気代だけ。その電気を太陽光でまかなえれば、ゼロになるという考え方です。
では、本当に光熱費はゼロになるのでしょうか。このコラムでは、「ゼロ」が何を意味しているのかを整理したうえで、ゼロに近づくための条件と、期待しすぎないほうがよい点をまとめます。
「ゼロ」は多くの場合、1年間の収支の話
「光熱費ゼロ」と言うとき、多くの場合は次のような意味で使われています。
- 1年間に電力会社から買う電気の料金と、太陽光の電気を売って得る収入を比べて、差し引きがゼロ以下になる
つまり、毎月の電気料金の請求がゼロになるわけではありません。電気を買えば料金はかかり、売った分の収入が別に入ってきて、1年間を通すと「買った分」と「売った分」がつり合う、というイメージです。
省エネ性能が高く、太陽光などでエネルギーをつくる「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」も、年間のエネルギーの収支をゼロ以下にすることを目指す住宅です。解説記事では、ZEHでも月単位では電気代がかかり、冬は電気を買う量が増え、春や秋は売る量が買う量を大きく上回るのが標準的な収支のパターンだと説明されています。
季節によって収支は大きく変わる
オール電化×太陽光の収支は、季節によって大きく変わります。
- 春・秋:日差しがあり、冷暖房もあまり使わないため、太陽光の電気が余りやすい。売る量が買う量を上回りやすい
- 夏:発電量は多いが、冷房で電気を使う
- 冬:日が短く発電量が減る一方、暖房と給湯で電気を多く使う。買う量が最も増えやすい
1年を通してゼロになる家でも、冬の数か月は電気代の請求が大きくなることがあります。家計の計画を立てるときは、この季節の波を前提にしておくことが大切です。
ゼロに近づけるのが難しくなっている理由
最近は、「売った収入で買った電気代を打ち消す」という考え方そのものが難しくなってきています。理由は、売る単価と買う単価の差です。
- 売る単価:2026年度に新しく始める住宅用の太陽光は、最初の4年間が1kWhあたり24円、5年目以降は8.3円
- 買う単価:たとえば東京電力エナジーパートナーのオール電化向けプラン「スマートライフS」は、価格.comによると、午前1時〜6時が27.86円、それ以外が35.76円(2024年4月からの料金、燃料費調整額と再エネ賦課金を含む)
買う単価のほうが売る単価より高いため、同じ1kWhでも、売って得る収入より買って払う料金のほうが大きくなります。1年間の収支をゼロにするには、買う電気の量よりかなり多くの電気を売る必要があります。
具体的に計算してみましょう。35.76円で買った電気1kWh分の料金を、売電の収入で打ち消すには、次の量を売る必要があります(編集部の計算)。
- 売る単価が24円の期間:35.76÷24=約1.5kWh
- 売る単価が8.3円の期間:35.76÷8.3=約4.3kWh
5年目以降は、1kWh買うごとに4kWh以上を売らなければ、収支がつり合いません。売る単価が下がるほど、「売って打ち消す」方法でゼロを目指すのは難しくなります。
太陽光・蓄電池・EVの経済効果を試算するサービス「エネがえる」の解説でも、電気代を完全に0円にすることは難しく、多少の電気代はかかるイメージだと指摘されています。
ゼロに近づくための条件
それでも、光熱費を大きく減らすことは十分に可能です。ゼロに近づくための条件をまとめると、次のようになります。
- 家の断熱性能が高い:冷暖房に使う電気が少なくて済む
- 太陽光の容量が十分にある:家で使う電気に対して、発電量に余裕がある
- 昼間の電気をできるだけ自分で使う:売るより使うほうが得になりやすいため、昼間に家事をしたり、機種によってはエコキュートを昼間に沸き上げたりする
- 蓄電池で昼の電気を夜に回す:夜に高い電気を買う量を減らせる
- 暮らし方に合った料金プランを選ぶ
「売って稼ぐ」より「買う量を減らす」ほうが、今の単価の関係では効果が出やすくなっています。太陽光の電気を売るより自分で使うほうが得になりやすい背景は、GX LAB の「“売る”より“使う”へ。自家消費という発想転換」で解説しています。
おわりに
オール電化×太陽光で光熱費ゼロを目指すときのポイントをまとめます。
- 「光熱費ゼロ」は多くの場合、1年間の収支の話で、毎月の請求がゼロになるわけではない
- 冬は買う量が増え、春・秋は売る量が増えるなど、季節によって収支は大きく変わる
- 売る単価より買う単価のほうが高いため、「売って打ち消す」のは難しくなっている
- 断熱、昼間の自家消費、蓄電池、料金プランで「買う量を減らす」ことが近道
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。料金プランの単価や買取価格は、電力会社・年度によって異なります。