北海道豊富町の豊富猿払森林組合、森林J-クレジットのプロジェクト登録が完了 8年間で2万3,985t-CO2の吸収を見込む
北海道豊富町の豊富猿払森林組合が所有する469.14haの森林が、J-クレジット制度のプロジェクトとして正式登録されました。北海道銀行がきっかけをつくった3者のプロジェクトの中身と、5月に登録された町の森林のプロジェクトとの違いを解説します。

目次
北海道豊富町の豊富猿払森林組合と株式会社バイウィルが進めてきた森林J-クレジットのプロジェクトが、第69回認証委員会で、国の制度に正式に登録されました。2026年10月8日にバイウィルが発表しています。
このプロジェクトは、株式会社北海道銀行がきっかけで始まりました。豊富猿払森林組合、北海道銀行、バイウィルの3者で、今後もクレジットの創出と販売を進めるとしています。
豊富町では、2026年5月に町が管理する森林のプロジェクトも登録されています(北海道豊富町の森林J-クレジット)。今回は、同じ町にある森林組合の森林が登録された形です。この記事では、プロジェクトの中身と、町の森林のプロジェクトとの違いを見ていきます。
プロジェクトのポイント
- 森林の所有者:豊富猿払森林組合(北海道豊富町、代表理事組合長:水戸部正博氏)
- きっかけ:株式会社北海道銀行
- 支援:株式会社バイウィル
- 方法論:森林経営活動(適切な森林管理によるCO₂吸収量の増加を算定する方法)
- プロジェクトの種類:通常型
- 面積:469.14ha
- 吸収見込み量:2万3,985t-CO₂(認証対象期間:2025年4月1日〜2033年3月31日)
- 登録:第69回認証委員会
認証対象期間は8年間です。単純に年数で割ると、1年あたりおよそ3,000t-CO₂の吸収を見込んでいる計算になります。これはあくまで見込みで、実際に発行されるクレジットの量は、今後のモニタリングと国の認証で決まります。
森林の価値を収益に変える仕組み
日本の森林は、木材価格の低迷や担い手不足で、手入れの負担が大きくなっています。きちんと管理していても、その価値を収入に結びつけにくいのが実情です。
J-クレジット制度は、適切な森林管理で増えたCO₂の吸収量を国が認証し、取引できるクレジットにする仕組みです。森林の所有者や管理者にとっては、木材を売る以外の新しい収入源になります。
クレジットが発行されるまでには、次の段階があります。
- 森林管理の計画などをもとに、プロジェクトを登録する
- 一定期間の森林管理によるCO₂の吸収量を記録し、算定する(モニタリング)
- 国の審査と認証を受け、クレジットが発行される
豊富猿払森林組合が終えたのは、最初の「登録」の段階です。発表では、登録の意味とこれからの流れが次のように説明されています。
今回のプロジェクト登録により、豊富猿払森林組合が所有する森林は、J-クレジット創出に向けた対象森林として正式に登録されました。今後は、適切な森林管理を継続しながらCO2吸収量のモニタリング・算定を行い、国による認証を経てJ-クレジットの発行を目指します。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-10-08)
将来的には、木材の販売に加えてクレジットの収入を得て、それを森林整備や林業の継承に回すことで、手入れを続けられる森林経営につながることが期待されています。
3者の役割
- 豊富猿払森林組合:対象となる森林を所有・管理し、手入れを続ける
- 北海道銀行:プロジェクトのきっかけをつくる
- バイウィル:登録の申請から審査への対応、認証に必要なモニタリング、販売戦略の立案と販売までを支援する
発表では、バイウィルの役割について次のように書かれています。
本プロジェクトにおいても、森林が環境価値だけでなく収益を生み出す「気候資産(Climate Asset)」として活用される仕組みを構築し、その収益を森林整備や林業の継承へ還元することで、地域循環型のカーボンニュートラルの実現に寄与します。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-10-08)
森林組合が、専門的な申請や審査への対応、毎年のモニタリング、買い手探しまでを自前で担うのは簡単ではありません。こうした実務を専門の事業者が引き受けることで、森林組合は森林の手入れそのものに力を注げます。
町の森林のプロジェクトとの違い
豊富町では、4か月あまりの間に2つのプロジェクトが登録されたことになります。
- 町の森林(2026年5月発表):豊富町が管理する森林/929ha/3万9,884t-CO₂(全期間)/第68回認証委員会
- 森林組合の森林(今回):豊富猿払森林組合が所有する森林/469.14ha/2万3,985t-CO₂(2025年4月〜2033年3月)/第69回認証委員会
どちらも北海道銀行がきっかけをつくり、バイウィルが支援する形は共通しています。違いは、森林の持ち主です。町の森林に続いて、地域の森林組合の森林もクレジットの対象になったことで、町の中で森林クレジットに取り組む主体が広がりました。豊富町では、2024年12月に町、北海道銀行、ユーラスエナジーホールディングス、バイウィルの4者がカーボンニュートラルの実現に向けた連携協定を発表しています。
同じ認証委員会で登録された森林
第69回認証委員会では、ほかにも、自治体や森林組合の森林プロジェクトが登録されています。
- 佐賀県唐津市:市とまつら森林組合が管理する森林。佐賀銀行が販売まで支援する(唐津市とまつら森林組合の森林J-クレジット)
- 鹿児島県出水市:鹿児島銀行と三井住友海上がきっかけをつくった森林のプロジェクト(出水市の森林J-クレジット)
いずれも地元の金融機関が関わっており、地域の銀行が森林クレジットの出発点になる流れが続いています。
ほかの森林組合・自治体が参考にできること
- 自治体と森林組合で順に取り組む:豊富町のように、町の森林に続いて森林組合の森林を登録すると、地域の中で知見を生かしやすい
- 地元の銀行に相談する:地域の銀行が、支援事業者や買い手候補とつないでくれることがある
- 見込み量は目安として扱う:登録時の吸収見込み量は、実際の発行量と違いうる。計画には幅を持たせる
- 実務の担い手を決めておく:登録後もモニタリングと報告が続く。自前で担うのか、支援事業者に任せるのかを最初に決める
まとめ
- 北海道豊富町の豊富猿払森林組合が所有する469.14haの森林が、第69回認証委員会でJ-クレジットのプロジェクトとして正式に登録された
- 2033年3月までの8年間で、2万3,985t-CO₂の吸収を見込む
- 北海道銀行がきっかけをつくり、登録から販売まではバイウィルが支援する
- 豊富町では、町の森林に続いて森林組合の森林も登録され、町の中で森林クレジットの取り組みが広がっている
町と森林組合、2つのプロジェクトが動き出した豊富町。北の森林の手入れが、どのように新しい収入に変わっていくのか、今後の動きに注目です。
出典・参考・画像
- 株式会社バイウィル「豊富猿払森林組合とバイウィルの共同プロジェクト、J-クレジット制度におけるプロジェクト登録が完了」(2026年10月8日公表)
- 株式会社バイウィル「北海道豊富町とバイウィルの共同プロジェクト、J-クレジット制度におけるプロジェクト登録が完了」(2026年5月27日公表)
- 株式会社バイウィル「北海道豊富町、北海道銀行、ユーラスエナジーHD、バイウィルがカーボンニュートラル実現を目指し、連携協定を締結」