2027年度からFIT非化石証書の最低価格が引き上げへ|中小企業が備えたいこと
再エネの環境価値を証明するFIT非化石証書の最低価格が、2027年度から0.4円から0.6円に引き上げられ、非FIT非化石証書と同じ水準になる方針です。変更の中身と背景、証書を使って再エネを調達する中小企業への影響を整理しました。

目次
はじめに
取引先から脱炭素への対応を求められ、非化石証書を使って「実質再生可能エネルギー」の電気を調達している中小企業が増えています。その証書の価格のルールが、2027年度から変わる方針です。
資源エネルギー庁の資料では、FIT非化石証書の最低価格を1kWhあたり0.4円から0.6円に引き上げ、非FIT非化石証書の最低価格と同じ水準にする方向が示されました。このコラムでは、変更の中身と背景、証書を使う中小企業への影響と備えを整理します。
変更の中身
資源エネルギー庁が2026年3月4日の審議会に示した資料では、FIT非化石証書の価格について、次のような段階的な方針が示されています(検索結果の要約で確認)。
- 2026年度:特例的な措置として、最低価格0.4円・最高価格4.0円を据え置く
- 2027年度:最低価格を0.6円に引き上げ、非FIT非化石証書の現在の最低価格とそろえる
- 2028年度以降:最低価格を、非FIT非化石証書の市場の最低価格と連動させる
つまり、これまで「FITの証書は非FITの証書より安く買える」という状態だったものが、2027年度からは最低価格の水準がそろうことになります。
そもそもFITと非FITの証書の違い
関西電力の解説をもとに、2つの証書の違いを整理します。
- FIT非化石証書:固定価格買取制度(FIT)で買い取られた再生可能エネルギーの電気が由来。小売電気事業者のほか、企業などの需要家も購入できる。価格は1kWhあたり0.4円〜4.0円
- 非FIT非化石証書:大型の水力や、FITの買取期間を終えた発電設備、原子力などが由来。基本的に小売電気事業者が購入する。価格は1kWhあたり0.6円〜1.3円
どちらも非化石価値取引市場で取引されます。電気そのものを取引する市場とは別の市場で、環境の価値だけが売り買いされる仕組みです。電気の市場については、GX LAB の「卸電力市場とは?蓄電池が『安く買って高く売る』仕組み」で解説しています。
なぜ引き上げるのか
解説記事では、証書の種類ごとの価格の不均衡が、企業が発電事業者から再エネの電気を直接買う契約(PPA)の市場などに影響しているという懸念が、見直しの背景として指摘されています。
FIT非化石証書がほかの証書より安く買える状態が続くと、企業にとっては、新しい再エネ設備から電気と環境価値を買う契約より、安い証書を買うほうが手軽で安上がりになります。その結果、新しい再エネ設備をつくる動きが進みにくくなるおそれがあります。最低価格をそろえることで、こうした偏りを整えるねらいがあると考えられます。
中小企業への影響
証書の費用が上がる可能性
FIT非化石証書を最低価格に近い水準で買っている場合、2027年度からは費用が上がる可能性があります。最低価格の差だけで計算すると、次のようになります(編集部の計算)。
- 最低価格の差:0.6円-0.4円=1kWhあたり0.2円
- 年間の電気の使用量が10万kWhの事業所:0.2円×10万kWh=年間2万円
- 年間の電気の使用量が100万kWhの事業所:0.2円×100万kWh=年間20万円
実際の費用は、取引の価格や、証書を電力会社のプランを通じて買っているかどうかによって変わります。ただ、「環境価値は今の価格で買い続けられる」とは限らないことは、押さえておきたいポイントです。
実質再エネのプランを使っている場合
電力会社の実質再エネのプランを使っている企業も、電力会社が証書の費用の変化をプランの料金に反映する可能性があります。契約中のプランの料金改定の予定は、早めに確認しておきましょう。
今から備えたいこと
- 自社の再エネの調達方法を確認する:証書を直接買っているのか、電力会社のプランを通じているのか
- 使っている証書の種類を確認する:FITか非FITか、再エネ指定か
- 2027年度以降の費用を試算する:最低価格の引き上げの影響を、使用量をもとに見積もる
- ほかの調達方法も比べる:自社の屋根に太陽光を付けて自家消費する、発電事業者と直接契約するなど、証書以外の方法も検討する
取引先に再エネの使用を説明している企業は、調達方法の変化が説明の内容にも影響しないかを確認しておくと安心です。制度の詳細は今後の審議会で固まっていくため、資源エネルギー庁の発表も定期的に確認しましょう。
おわりに
FIT非化石証書の最低価格の引き上げについて、ポイントをまとめます。
- 2026年度は最低0.4円・最高4.0円を据え置き、2027年度から最低価格を0.6円に引き上げる方針
- 2028年度以降は、非FIT非化石証書の市場の最低価格と連動させる方向
- 背景には、証書の種類ごとの価格の不均衡が再エネの調達市場に与える影響がある
- 証書を使う中小企業は、2027年度以降の費用の変化を見込み、ほかの調達方法も比べておく
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の詳細は、資源エネルギー庁の公式資料をご確認ください。