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糸魚川市×バイウィルが脱炭素連携協定、市のLEDからJ-クレジットを創出へ

新潟県糸魚川市とバイウィルが脱炭素の連携協定を締結。市の事務事業編の計画を起点に、LED設備からJ-クレジットをつくり地域で活かす構想と、その意味を解説します。

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糸魚川市役所で行われた連携協定の調印式で、協定書を手にする糸魚川市長の久保田郁夫氏(左)とバイウィル代表取締役社長の下村雄一郎氏(右)
目次

新潟県糸魚川市と株式会社バイウィルが、2026年8月26日、「脱炭素社会の実現に向けた取組に関する連携協定」を締結しました。9月18日にバイウィルが発表しています。

バイウィルは9月にも、広島県安芸高田市・アイリスオーヤマとJ-クレジットの活用に関する協定を結んでいます(安芸高田市×アイリスオーヤマ×バイウィルの取り組み)。自治体がJ-クレジットの「買い手」ではなく「つくり手」に回る動きが、続けて出てきました。

この記事では、発表の要点を押さえたうえで、次の2点を考えます。

  • 自治体の脱炭素計画とJ-クレジットはどうつながるのか
  • 地域の事業者にとって何が変わるのか

協定のポイント

  • 締結日:2026年8月26日(糸魚川市役所で締結式)
  • 連携先:新潟県糸魚川市(市長:久保田郁夫氏)、株式会社バイウィル
  • 目的:地域のカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現
  • 最初に取り組むこと:市のLED設備を起点にしたJ-クレジット創出の検討

発表では、協力する分野として5つの項目が挙がっています。要点を言い換えると次のとおりです。

  • 環境価値に関する情報・サービス・ノウハウを提供する
  • 環境価値を使った新しい脱炭素経営のモデルをつくる
  • J-クレジットの創出を支援し、販売する
  • 市民や市内の事業者に向けて、脱炭素の取り組みを広める
  • そのほか、両者で協議して必要と認めたことに取り組む

出発点は市役所自身の「事務事業編」計画

協定の背景には、糸魚川市が2026年4月に策定した計画があります。

糸魚川市は、2026年4月に2050年までに市の事務事業における二酸化炭素の排出量実質ゼロをめざし、「第4次糸魚川市地球温暖化対策実行計画(事務事業編)」を策定しました。実現に向けて、省資源・省エネルギーの推進などに取り組んでいます。今回、糸魚川市においては新たな取り組みとなるJ-クレジット創出・活用を進めるため、本連携協定に至りました。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-09-18)

自治体の地球温暖化対策実行計画は、大きく2つに分かれます。市役所の庁舎・学校・公共施設・公用車など、自治体自身の活動から出る排出を減らす「事務事業編」と、地域全体の排出を対象にする「区域施策編」です。

今回の起点は前者です。まず市役所が一つの「排出者」として削減に取り組み、その削減分をJ-クレジットという形で価値に変えようとしています。

庁舎や学校の照明をLEDに替えれば、電気の使用量が減り、CO₂の排出も減ります。これまでは「電気代が下がった」で終わっていた効果を、国が認証したクレジットとして取引できる形にする。うまく回れば、計画の推進と新しい収入源づくりを同時に進められます。

なぜLEDから始めるのか

J-クレジットの「方法論」、つまりどの設備・活動で削減量を算定するかについて、発表では次のように書かれています。

J-クレジットの創出方法(方法論)については、LED設備の導入から着手することを検討しており、その後、その他の方法論による創出にも広げていく想定です。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-09-18)

LEDから始める理由としては、次の3つが考えられます。

  • 削減量を示しやすい。 入れ替え前後の消費電力を比べやすく、「どれだけ減ったか」を説明しやすい設備です
  • 自治体は照明の数が多い。 庁舎、学校、体育館、公民館など施設が多く、1か所ずつの削減量は小さくても、まとめればまとまった量になりえます
  • すでに進めている更新と重なる。 省エネ化の一環で、LEDへの更新を計画的に進めている自治体は少なくありません。新しい投資を上乗せしなくても、手元の取り組みを価値に変えられる余地があります

一方で、J-クレジットにはプロジェクトの登録、モニタリング(削減量の記録)、第三者の検証といった手続きがあり、手間も費用もかかります。削減量が小さいままでは、手間に見合わないこともあります。だからこそ、次に見る「支援の範囲」が重要になります。

登録から販売まで、どこを誰が担うか

バイウィルは、糸魚川市におけるJ-クレジット創出プロジェクトの登録・申請からモニタリング、創出したクレジットの販売までをシームレスに支援します。また、販売に関しては、「地産地消」によって糸魚川市をはじめとする地域の脱炭素化を促進します。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-09-18)

自治体の職員が、方法論の選定から登録申請、毎年のモニタリング報告、買い手探しまでを自前で担うのは簡単ではありません。とくに「つくったクレジットを誰に売るか」は、行政の通常業務の外にある仕事です。

今回の協定は、この実務の大部分を民間の専門事業者が引き受ける形です。自治体は削減の取り組みとデータの提供に集中し、クレジット化と販売は事業者が担う。こうした役割分担は、他の自治体が同じような仕組みを検討するときの参考になります。

「地産地消」は地域の事業者に何をもたらすか

注目したいのは、販売の考え方として「地産地消」が掲げられている点です。

市内でつくられたクレジットを、市内や近隣の事業者が買う。そうなると、次のような流れが生まれます。

  • 事業者側:取引先から排出削減への協力を求められたとき、地元で生まれたクレジットという、説明しやすい手段が加わる
  • 市側:クレジットの売上が市に入り、次の省エネ・再エネ投資の原資にできる可能性がある
  • 地域全体:脱炭素にかかるお金が、域外ではなく域内で回る

ただし、販売先・価格・売上の使い道などの具体的な中身は、今回の発表では示されていません。どのような形で市内の事業者が関われるのかは、今後の発表を待つ必要があります。

安芸高田市の事例との共通点と違い

同じバイウィルが関わる安芸高田市の協定と比べると、今回の特徴が見えてきます。

共通点

  • 市のLED設備を起点にJ-クレジット創出を検討している
  • バイウィルが登録・申請から販売までを支援する
  • 創出したクレジットの地産地消を目指している

違い

  • 安芸高田市は、アイリスオーヤマを加えた3者の協定。今後導入するLED設備について、どれだけクレジットを生み出せるかの調査も含む
  • 糸魚川市は2者の協定。事務事業編の計画を背景に、市民・市内事業者への普及啓発や、新しい脱炭素経営モデルづくりが協力項目に入っている

設備から始めるやり方は同じでも、糸魚川市は「市役所の計画の推進」と「地域への広がり」の両方を協定の中に位置づけているのが特徴です。

ほかの自治体・事業者が参考にできること

自治体の担当者にとっては、次の点が検討の入口になります。

  • 事務事業編の計画ですでに進めている省エネ更新(LED、空調など)を洗い出し、クレジット化の対象になりそうな設備があるか確かめる
  • 更新前後の電力使用量など、削減量の算定に使う記録を残しておく
  • 売却したクレジットの削減分を、市の削減実績としてどう扱うかも前もって整理しておく

地域の事業者にとっては、「クレジットを買う」選択肢が身近になる可能性があります。自社の排出削減を進めたうえで、どうしても減らしきれない分をどう扱うか。その選択肢の一つとして、地元の自治体が生み出すクレジットの動きを見ておく価値はあります。

まとめ

糸魚川市とバイウィルの協定は、市役所自身の脱炭素計画を起点に、LEDの省エネ効果をJ-クレジットに変え、地域で活かそうとする取り組みです。

  • 起点は、2050年に市の事務事業の排出を実質ゼロにする「事務事業編」の計画
  • 最初の対象はLED設備。その後、ほかの方法論にも広げる想定
  • 登録から販売まではバイウィルが支援し、販売は「地産地消」を目指す

安芸高田市に続く事例として、自治体が「環境価値のつくり手」になる流れは今後も広がっていきそうです。具体的な創出量や販売の形が見えてきた段階で、GX LABでも追ってお伝えします。

出典・参考・画像参照元

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