静岡県浜松市が森林J-クレジットの「地産地消」コンソーシアムを設立とバイウィルが発表
静岡県浜松市が事務局となり、森林J-クレジットをつくる側・買う側・仲介する側が集まるコンソーシアムが発足しました。1対1の売買から「地域の市場」へ。その仕組みと参加者の顔ぶれを解説します。

目次
静岡県浜松市、地域の企業、林業関係者、金融機関、バイウィルが連携し、「浜松地域森林由来J-クレジット地産地消サイクル推進コンソーシアム」を設立しました。2026年8月31日にバイウィルが発表しています。
浜松地域の森林から生まれたJ-クレジットを、地域の企業が買って使う。その「地産地消」を進めるための集まりです。事務局は浜松市が務めます。
GX LABではこれまで、一つの自治体の森林でクレジットをつくり、特定の企業が買う取り組みを紹介してきました。浜松市のコンソーシアムは、つくる側・買う側・仲介する側がそれぞれ複数集まる点で、一歩踏み込んだ形です。この記事では、その仕組みと参加者の顔ぶれを見ていきます。
コンソーシアムのポイント
- 名称:浜松地域森林由来J-クレジット地産地消サイクル推進コンソーシアム
- 事務局:浜松市(市長:中野祐介氏)。コンソーシアムの運営を担う
- 対象地域:湖西市、磐田市などを含む、浜松市を中心とした地域
- 目的:浜松地域の森林保全と林業振興、地域企業のカーボンニュートラル対応を進める
- これまでの経緯:2026年4月に、市と関係者が森林由来J-クレジットの地産地消に向けた基本合意書を締結し、仕組みや体制を検討してきた
- バイウィルの役割:「仲介者」として参加
3つの立場が一つの場に集まる
発表に載っているスキーム図では、参加者が3つの立場に分かれています。
つくる側(創出者):クレジットの創出・販売
- 有限会社天竜フォレスター
- 天竜森林組合、春野森林組合、龍山森林組合(いずれも天竜林材業振興協議会)
- 株式会社平野興産
- 株式会社フジイチ
買う側(需要者):クレジットの購入
- エンケイ株式会社
- 株式会社エフ・シー・シー
- サーラエナジー株式会社
- 株式会社静岡銀行
- スズキ株式会社
- 株式会社ソミック石川
- 浜松ホトニクス株式会社
- ヤマハ株式会社
仲介する側(仲介者):クレジットの創出支援・販売支援など
- 遠州信用金庫
- 静銀経営コンサルティング株式会社
- 株式会社ステラーグリーン
- 浜松いわた信用金庫
- 株式会社バイウィル
買う側には、浜松地域に拠点を持つ製造業などの企業が並んでいます。仲介する側には、地元の信用金庫や銀行系のコンサルティング会社が加わっています。地域の林業、ものづくり、金融が、一つのテーブルについた形です。
「売買」の先にある森林関連事業
このコンソーシアムが目指すのは、クレジットを売り買いすることだけではありません。
本コンソーシアムでは、J-クレジットを単に取引するだけではなく、「創出者」と「需要者」がつながり、クレジットの取引をきっかけとして新たな森林関連事業を生み出すことを重視します。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-08-31)
発表で示されている循環を、要点に絞って言い換えると次のとおりです。
- 森林の持ち主や林業事業者が、間伐などの手入れを行い、吸収量をJ-クレジットとして認証してもらう
- 地域の企業が、そのクレジットを買って自社の脱炭素の取り組みに使う
- 売買をきっかけに、買う側とつくる側が一緒に、植林や間伐、森林への理解を深める活動、地域の木材の活用などの事業を企画する
- 事務局の浜松市が、情報の共有や引き合わせ、発信を通じて、この流れが続くように支える
企業にとってクレジットは、排出量を埋め合わせる手段であると同時に、地域の森林とかかわる入口にもなります。
なぜ「市が事務局」なのか
浜松市を事務局として、J-クレジットの需要者・創出者・仲介者が連携し、情報集約やビジネスマッチング、森林関連事業の支援、情報発信等を行うことで、森林の環境価値を地域内で循環させ、脱炭素と森林・林業の持続的な発展を両立する地域モデルの構築を目指します。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-08-31)
つくる側と買う側が複数いると、「誰が誰に、どれだけ売るのか」を調整する役が必要になります。特定の企業ではなく市が事務局を務めることには、次のような意味が考えられます。
- 中立の立場:特定の売り手や買い手に偏らず、参加者どうしを引き合わせやすい
- 信頼:市が運営する場であることが、参加を検討する企業や林業事業者の安心材料になる
- 政策とのつながり:森林保全や林業振興、地域企業の脱炭素といった市の政策と、コンソーシアムの活動を結びつけやすい
ほかの自治体の事例と比べると
- 岡山県鏡野町:町の森林でつくったクレジットを、地元のガス会社1社が8年間の長期契約で購入(鏡野町の森林J-クレジット)
- 秋田県由利本荘市:市の森林でプロジェクトを登録。市の出身者とのつながりを持つ企業が将来の購入を検討(由利本荘市の森林J-クレジット)
- 静岡県浜松市:市は森林の持ち主としてではなく事務局として、複数のつくる側と買う側を結ぶ
鏡野町や由利本荘市は、「一つの森林と、決まった買い手」を結ぶ形です。浜松市は、地域の中にクレジットの小さな市場をつくる形といえます。森林の持ち主も買い手も多い地域だからこそ選べる形で、ほかの地域が同じ形をとるには、参加する企業や林業事業者の数が必要になります。
ほかの自治体・事業者が参考にできること
自治体の担当者にとって
- 自らが持ち主でなくても関われる:市の森林がなくても、地域の林業事業者と企業をつなぐ事務局として関わる道がある
- 合意書から始める:浜松市は、まず関係者と基本合意書を結び、仕組みや体制を検討してからコンソーシアムを立ち上げた
- 地元の金融機関を仲介役に:信用金庫や地方銀行は、地域の企業と林業事業者の両方と接点を持っている
地域の企業にとって
- 地元の森林に貢献する選択肢:クレジットを買うことが、地域の森林整備や林業の支えにつながる
- 買うだけで終わらない:植林や間伐への参加、地域の木材の活用など、森林とかかわる事業に一緒に取り組める
まとめ
浜松市のコンソーシアムは、森林J-クレジットの「地産地消」を、地域ぐるみで進めるための場です。
- 事務局は浜松市。湖西市、磐田市などを含む浜松地域が対象
- つくる側・買う側・仲介する側がそれぞれ複数参加し、地域の林業、製造業、金融が集まった
- クレジットの売買をきっかけに、植林や間伐、地域の木材の活用などの森林関連事業を生み出すことを重視している
- バイウィルは仲介者として、クレジットの創出支援や、つくる側と買う側の引き合わせを担う
一つの森林と一つの買い手を結ぶ形から、地域の中で環境価値が行き交う形へ。浜松市のコンソーシアムから、どのような森林関連事業が生まれるのか、今後の動きに注目です。
出典・参考
- 株式会社バイウィル「静岡県浜松市、地域企業・林業関係者・金融機関等とバイウィルが連携し、『浜松地域森林由来J-クレジット地産地消サイクル推進コンソーシアム』を設立」(2026年8月31日公表)