海山林友 森林J-クレジットが正式認証 日本初のFSC認証林から3,652t-CO
三重県の海山林友が管理する森林で、J-クレジットが国に正式認証されました。2000年に日本で初めてFSC森林認証を取得した速水林業の森林です。認証で何ができるようになったのか、自治体の事例と比べながら解説します。

目次
三重県の海山林友株式会社が管理する森林で、J-クレジットが第69回J-クレジット制度認証委員会において正式に認証されました。手続きを支援した株式会社バイウィルが、2026年8月25日に発表しています。
画像出典元:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-08-25)
対象は、速水林業の森林です。海山林友は、この森林の施業と管理を担っています。バイウィルは2024年9月7日に速水林業と連携協定を結んでおり、プロジェクトは株式会社三十三銀行がきっかけで始まりました。海山林友、三十三銀行、バイウィルの3者で、今後はクレジットの販売と活用を進めるとしています。
GX LABではこれまで、自治体の森林でJ-クレジットを「登録」した段階の事例を紹介してきました。今回は民間の林業会社の森林で、クレジットが「認証」され、売れる段階に入った事例です。
認証のポイント
- 森林の管理者:海山林友株式会社(三重県紀北町、代表取締役:川端康樹氏)
- 対象の森林:速水林業の森林。2000年に日本で初めてFSC森林認証を取得
- 所在地:三重県尾鷲市、北牟婁郡紀北町の周辺
- 面積:863.24ha
- 認証期間:2025年4月1日〜2033年3月31日
- 今回認証された吸収量:3,652t-CO₂(2025年4月1日〜2026年3月31日の1年分)
- きっかけ:株式会社三十三銀行
- 支援:株式会社バイウィル(登録申請から審査対応、モニタリング、販売戦略の立案・販売まで)
今回の3,652t-CO₂は、8年間の認証期間のうち、最初の1年分です。残りの期間についても、手入れを続けながら吸収量を記録し、改めて認証を受けていく流れになります。
「認証」で、クレジットが売れるようになった
J-クレジットは、登録、モニタリング(吸収量の記録・算定)、国の審査と認証を経て、はじめてクレジットとして発行されます。今回の海山林友は、この認証までたどり着きました。
今回の認証により、海山林友が適切な森林管理によって創出した環境価値が国から正式に認められ、創出されたJ-クレジットを販売できるようになりました。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-08-25)
「登録」の段階では、どの森林を、どの方法で、どの期間クレジットの対象にするかが決まるだけで、まだ売るものはありません。「認証」を受けてはじめて、実際に売ったり使ったりできるクレジットが手に入ります。
木材は、木を切って売るときにしか収入になりません。クレジットは、森林を手入れしながら育てている間にも収入を生みます。発表では、その収入を森林整備や林業の継承に回すことで、手入れを続けられる森林経営につながることが期待されています。
日本初のFSC認証林から生まれたクレジット
今回の事例で特に注目したいのは、対象の森林そのものです。
なお、今回J-クレジットの対象となった森林は、速水林業が管理してきた森林であり、2000年に日本で初めてFSC森林認証を取得しています。長年にわたり適切に管理されてきた森林から生まれる環境価値を、J-クレジットとして新たな経済価値につなげる取り組みです。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-08-25)
FSC森林認証は、環境や地域社会に配慮して適切に管理されている森林を、第三者が認証する国際的な制度です。速水林業の森林は、その認証を日本で最初に取得した森林です。
これまで、よく手入れされた森林の価値は、木材の品質や、FSC認証のような「管理の証明」として評価されてきました。J-クレジットによって、その手入れが生んだCO₂の吸収量も、売ることのできる価値として数えられるようになります。長く丁寧に管理されてきた森林が、その積み重ねを新しい形で収入に変えた事例といえます。
森林の持ち主に価値を返す
発表では、この取り組みの特徴として3つの点が挙げられています。要点を言い換えると次のとおりです。
- 見えにくかった価値を見える形に:お金に換算しにくかったCO₂の吸収という働きを、J-クレジットで数量のある資産に変えた
- 森林に新しい収入源を:木を切って売るときが主な収入だった森林に、クレジットの販売による収入を加えた
- 持ち主への還元:クレジットの売却益を森林の持ち主に返すことで、森林への関心を高め、手入れを活発にする
森林の持ち主が、自分の森林に関心を持ち続けられるかどうかは、林業の大きな課題です。手入れをすれば収入が生まれる仕組みは、その関心をつなぎとめるきっかけになります。
自治体の事例と比べると
同じ第69回認証委員会では、秋田県由利本荘市などの自治体の森林プロジェクトが「登録」されています(由利本荘市の森林J-クレジット)。進み具合で並べると、次のようになります。
- 登録を終え、発行を目指す段階:秋田県由利本荘市など。認証期間は2025年4月から
- 最初の1年分が認証された段階:海山林友(今回)。2025年4月から2026年3月までの1年分、3,652t-CO₂が認証
- 認証を受け、買い手も決まった段階:岡山県鏡野町。地元のガス会社が8年間の長期契約で購入(鏡野町の森林J-クレジット)
海山林友は、クレジットを売れる状態になりました。次の焦点は、誰が買い、その収入をどう森林に戻していくかです。
また、ここでも地元の金融機関がきっかけをつくっています。鏡野町では中国銀行が、今回は三十三銀行がプロジェクトの出発点になりました。森林を持つ事業者と支援事業者をつなぐ役として、地域の銀行の存在感が増しています。
林業事業者が参考にできること
- 管理の記録が強みになる:長年にわたる適切な管理と、その記録は、クレジットの手続きでも生きる
- 認証期間は長い:認証期間は8年間。1年ごとの記録と認証を続ける体制を、最初に考えておく
- 売り先を早めに考える:認証されたクレジットは、売れてはじめて収入になる。支援事業者や金融機関と一緒に買い手を探す
- 持ち主への還元を仕組みにする:売却益を森林の持ち主に返す流れをつくると、手入れを続ける動機になる
まとめ
- 三重県の海山林友が管理する森林で、J-クレジットが第69回認証委員会において正式に認証された
- 対象は、2000年に日本で初めてFSC森林認証を取得した速水林業の森林。面積は863.24ha
- 今回認証されたのは、2025年4月から2026年3月までの1年分の吸収量3,652t-CO₂
- 三十三銀行がきっかけをつくり、バイウィルが手続きから販売までを支援。3者で販売と活用を進める
長く大切に管理されてきた森林が、その手入れの成果をクレジットという新しい価値に変えました。これからどのような買い手とつながり、森林に還元されていくのか、今後の動きに注目です。
出典・参考
- 株式会社バイウィル「海山林友とバイウィルの共同プロジェクト、森林クレジット創出が正式認証。カーボンニュートラルへ前進」(2026年8月25日公表)
- 株式会社バイウィル「速水林業とバイウィルが、森林クレジットの創出に向けて契約を締結」