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排出枠の割当て方式|ベンチマークとグランドファザリングの水準、新設・廃止・生産量変動の調整

排出量取引制度(GX-ETS)の排出枠は、業種ごとのベンチマークか、過去の排出量をもとにするグランドファザリングで無償割当てされます。基準となる期間、2030年度に向けた水準の引き下げ方、削減率、事業所の新設・廃止や生産量の変動に応じた調整を、国の審議会の中間整理(案)をもとに整理しました。

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碁盤の目のように並ぶ工業団地の区画を真上から見たジオラマ
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排出量取引制度(GX-ETS)で、企業にとって最も影響が大きいのが「排出枠がどれだけ割り当てられるか」です。割り当てられた量が排出実績より少なければ、足りない分を調達しなければなりません。この記事では、GX LAB 編集部が、産業構造審議会 排出量取引制度小委員会の中間整理(案)をもとに、割当ての基本となる2つの方式を整理します。

制度の全体像は、排出量取引制度(GX-ETS)とは?の解説で解説しています。

この記事でわかること

  • ベンチマークとグランドファザリングの違い
  • 基準となる期間
  • ベンチマークの水準の決め方
  • グランドファザリングの削減率
  • 新設・廃止や生産量の変動に応じた調整

なお、ここで紹介する数値は、2025年12月の中間整理(案)の段階のものです。具体的な割当ての方法は、国が定める指針で決まります。

2つの割当て方式

ベンチマーク方式

業種の特性を考慮する必要が高いエネルギー多消費分野などを中心に、製品の生産量あたりの排出原単位の基準(ベンチマーク)を業種ごとに定めます。

  • 割当量 = 基準活動量 × 各年度の目指すべき排出原単位

検討対象には、石油精製、鉄鋼、化学、紙パルプ、セメント、石灰製造、アルミ、ゴム製品、板ガラス、ガラスびん、自動車などの製造業と、発電部門が挙げられています。

グランドファザリング方式

ベンチマークを定めるのが難しい分野では、過去の排出量に一定の削減率を掛けて割当量を決めます。

  • 割当量 = 基準排出量 ×(1 − 目指すべき削減率 × 基準からの経過年数)

ベンチマークを基本に、難しい分野はグランドファザリングを活用するという考え方は、2025年2月に閣議決定された GX2040ビジョンでも示されています。ビジョンの全体像は、GX2040ビジョンの8つの柱の解説をご覧ください。

事業者全体の割当量は、事業所ごとのベンチマーク対象プロセスとグランドファザリング対象の割当量を合計し、後述の勘案事項による調整量を加えたものになります。

基準となる期間

基準活動量・基準排出量は、制度対象となる直前の3年度の平均です。2026年度から対象になる場合は、2023〜2025年度になります。この期間は GX リーグの第1フェーズと重なり、多くの企業が排出量の算定と検証を行っていたことが理由とされています。

基準期間中に次のようなことがあった場合は、計算の方法が変わります。

  • 事業所の新設:新設の翌年度以降の平均で計算する
  • 事業所の廃止:割当ての対象から除く
  • 大きな災害:指定された期間に属する年度は、前年度と同じとみなして計算する
  • 高圧ガス保安法に基づく保安検査:検査が終わった月以前の5か月間を除いて計算する

ベンチマークの水準

ベンチマークの水準は、業種内の各社の排出原単位を比べ、上位何%に当たるかで定め、毎年度段階的に厳しくしていきます。

  • 基準年度:上位50%の水準(業界の標準的な排出原単位)
  • 2030年度:上位32.5%の水準
  • その間の年度:線形に引き下げる

上位15%程度のトップランナー水準に業種全体が届くまで10年程度かかるとの考えから、5年後の2030年度は上位15%と50%の中間にしています。中間整理(案)の例では、上位50%が1.50トン、上位32.5%が1.20トンの業種なら、2026年度1.44、2027年度1.38、2028年度1.32、2029年度1.26、2030年度1.20トンと、毎年度下がっていきます。上位と中位の差が大きい業種には、制度開始から5年間に限った配慮措置もあります。

グランドファザリングの削減率

  • エネルギー起源 CO2:年率1.7%
  • 工業プロセス由来の CO2:年率0.3%(2030年度までの5年で1.5%)

エネルギー起源の削減率は、残りの燃料を排出係数の低い都市ガス並みまで、ベンチマークと同じ時間軸で転換する場合に必要なペースから算出されています。プロセス由来の CO2は、削減手段が製品の収率の改善などに限られるため、低い削減率になっています。

新設・廃止・生産量の変動に応じた調整

制度が新しい事業への参入や事業の拡大を妨げたり、国内での事業の縮小を促したりしないよう、制度対象になった後の変化に応じて割当量を調整します。

  • 事業所の新設:翌年度以降に追加で割り当てる
  • 事業所の廃止:翌年度以降は割り当てず、廃止後の分を翌年度の割当量から差し引く
  • 生産量などの増減:事業所ごとの活動量が、2年度平均で基準から±7.5%を超えて変わった場合に調整する

±7.5%は、リーマンショックやコロナ禍などの年を除いた、製造業の設備稼働率の通常の変動幅をもとにしています。エネルギー使用量1,500kL 未満の小規模な事業所は、まとめて1つの事業所とみなして調整します。

割当ての見通しを立てるために

ここからは GX LAB 編集部の見立てです。

ベンチマーク方式では、同業他社と比べた自社の排出原単位の位置で、枠が余るか足りないかが決まります。グランドファザリング方式でも、毎年1.7%のペースを超えて削減できるかが分かれ目です。いずれも、2030年度に向けて割当量が減っていく前提で、設備投資の計画を立てる必要があります。早期削減やカーボンリーケージ、研究開発投資による調整は、割当量を調整する3つの勘案事項の解説で取り上げています。

まとめ

  • 割当ては、業種ごとのベンチマークか、過去の排出量によるグランドファザリングで行う
  • 基準期間は制度対象の直前3年度(2026年度からなら2023〜2025年度)
  • ベンチマークは上位50%から2030年度の上位32.5%へ毎年度引き下げる
  • グランドファザリングの削減率は、エネルギー起源で年率1.7%、プロセス由来で年率0.3%
  • 新設・廃止や、活動量の±7.5%を超える変動に応じて割当量を調整する

出典・参考

※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。

よくある質問

Qベンチマークとグランドファザリングの違いは何ですか?
A

ベンチマークは、業種ごとに製品の生産量あたりの排出原単位の基準を定め、基準活動量に掛けて割当量を決める方式です。グランドファザリングは、ベンチマークを定めるのが難しい分野で、過去の排出量に一定の削減率を掛けて割当量を決める方式です。

Q割当ての基準になる期間はいつですか?
A

制度対象となる直前の3年度の平均です。2026年度から対象になる場合は、2023〜2025年度の活動量や排出量の平均が基準になります。

Q割当量は毎年変わりますか?
A

変わります。中間整理(案)では、ベンチマークは基準年度の上位50%水準から2030年度の上位32.5%水準へ毎年度引き下げ、グランドファザリングはエネルギー起源CO2で年率1.7%削減するとしています。事業所の新設・廃止や、活動量の±7.5%を超える変動でも調整されます。

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