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排出枠の割当量を調整する3つの勘案事項|早期削減・カーボンリーケージ・GX研究開発投資

排出量取引制度(GX-ETS)では、基本の割当てに加えて、制度開始前の削減努力、国際競争で生産が海外に移るおそれ(カーボンリーケージ)、GX関連の研究開発投資に応じて排出枠が追加されます。それぞれの対象、計算の考え方、上限、2031年度以降の扱いを整理しました。

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目次

排出量取引制度(GX-ETS)の排出枠は、ベンチマークやグランドファザリングで決まる基本の割当量に、企業ごとの事情に応じた調整が加わります。主なものが、早期削減、カーボンリーケージ、研究開発投資の3つの勘案事項です。この記事では、GX LAB 編集部が、産業構造審議会 排出量取引制度小委員会の中間整理(案)をもとに、それぞれの考え方を整理します。

制度の全体像は、排出量取引制度(GX-ETS)とは?の解説で解説しています。

この記事でわかること

  • 3つの勘案事項の全体像
  • 早期削減(過去の削減努力)の勘案
  • カーボンリーケージリスクの勘案
  • GX 関連の研究開発投資の勘案

ここで紹介する数値は、2025年12月の中間整理(案)の段階のものです。

3つの勘案事項

基本の割当量は、ベンチマークとグランドファザリングの解説で取り上げた方式で決まります。そのうえで、次の事情を勘案して割当量を追加します。

  1. 早期削減:グランドファザリング対象の排出源で、制度開始前に基準の削減率を超えて削減した量を評価する
  2. カーボンリーケージリスク:主な事業がリーケージ業種に当たり、排出枠の調達コストが一定水準を超える場合に、不足分の一部を追加する
  3. 研究開発投資:前年度の GX 関連の研究開発投資額に応じて、不足分の範囲で追加する

早期削減(過去の削減努力)の勘案

制度が始まる前から削減に取り組んできた企業ほど、過去の排出量を基準にするグランドファザリングでは割当量が少なくなってしまいます。そこで、制度開始前の削減努力を割当てに反映します。

  • 対象:グランドファザリングによる割当ての対象となる排出源
  • 起点の年度:GX リーグの試行で原則としていた2013年度。起点の排出量は前後を含む3年度(2012〜2014年度)の平均。2012年度以降に新設された事業所は、新設の翌年度以降の3年度平均
  • 認める量:起点の年度から、グランドファザリングの削減率(年率1.7%)を超えて基準期間までに削減した量
  • 過去の実績の確認:温対法の算定・報告・公表制度(SHK 制度)で報告された値を使う

ただし、過去の削減には生産の縮小によるものも含まれます。製造業の設備稼働率の低下などから、削減量の約2割は活動量の減少によるものと推計されるため、0.8の係数を掛けて割り引きます。

この措置は2026年度以降の5年間の割当量に反映され、2031年度以降は適用しないとされています。

カーボンリーケージリスクの勘案

カーボンリーケージは、国内の排出規制の負担で、生産や投資が規制の緩い海外に移り、世界全体では排出が減らない事態を指します。急な負担で資金が不足し、生産が止まるようなことを防ぐのがこの措置のねらいです。

対象になる条件

  • 主な事業が、カーボンリーケージ業種に当たること。輸出入の規模を示す貿易シェア(輸入額と輸出額の合計÷国内生産額)が0.1を超える業種
  • 排出枠の調達コスト(排出枠の不足分×平均市場価格)が、営業利益の4%を超えること

4%という水準は、国内製造業が毎年積み上げる現預金などが営業利益の8%程度で、その半分程度なら支払能力に直ちに影響しないとの分析にもとづいています。

追加される量

4%を超える部分の不足について、その50%を翌年度の割当量に追加します。不足分の過半を超えないようにすることで、脱炭素投資の動機を損なわないようにしています。中間整理(案)では、この措置による追加割当量は、制度対象者全体の排出量の2〜3%程度にとどまり、需給への影響は限られるとしています。

GX 関連の研究開発投資の勘案

足元では削減の効果が出ないものの、将来の脱炭素に必要な研究開発に投資する企業への配慮措置です。

  • 対象になる投資:GX 関連の特許に結びつく研究開発プロジェクトの費用。グリーンイノベーション基金のプロジェクトの自己負担分も含む。国の支援を受けた分は差し引く
  • 関連:グリーンイノベーション基金などの国の投資の動きは、GX投資の進捗の解説で取り上げている
  • 確認:特許の出願情報と研究開発プロジェクトの結びつきを示す資料と、第三者の確認書を国に提出する
  • 追加される量:(自社の投資額 − 業種ごとの平均的な投資額)÷ 排出枠の前年度の平均市場価格
  • 上限:排出枠の不足分の0.1倍

業種ごとの平均的な投資額は、売上高に対する GX 関連の研究開発費の基準として、製造業0.50%、エネルギー転換0.10%、運輸業0.02%、その他0.04%の案が示されています。この措置を受ける企業は、GX 関連の特許出願や研究開発費の総額などを移行計画に書いて公表します。

勘案事項をどう生かすか

ここからは GX LAB 編集部の見立てです。

3つの勘案事項は、いずれも「不足を和らげる」措置で、排出削減の努力そのものを不要にするものではありません。特に早期削減の勘案は2030年度までの時限措置で、カーボンリーケージや研究開発投資の措置も、効果を点検しながら見直すとされています。自社が当てはまるかを確かめたうえで、基本の割当量で計画を立て、勘案事項は上乗せとして考えるのが堅実です。

まとめ

  • 基本の割当てに、早期削減・カーボンリーケージ・研究開発投資の3つの勘案事項で追加がある
  • 早期削減は2013年度を起点に、年率1.7%を超えた削減量に0.8を掛けて評価。2031年度以降は適用しない
  • カーボンリーケージは、貿易シェア0.1超の業種で調達コストが営業利益の4%を超える場合、超えた部分の不足の50%を追加
  • 研究開発投資は、業種平均を上回る投資額に応じて、不足分の0.1倍まで追加

出典・参考

※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。

よくある質問

Q制度開始前の削減努力は評価されますか?
A

グランドファザリング対象の排出源について、2013年度を起点に、年率1.7%を超えて基準期間までに削減した量を評価し、0.8の係数を掛けて割当量に反映します。この措置は2026年度以降の5年間で、2031年度以降は適用しないとされています。

Qカーボンリーケージの措置はどんな場合に使えますか?
A

主な事業が貿易シェア0.1を超えるカーボンリーケージ業種に当たり、排出枠の調達コストが営業利益の4%を超える場合です。超えた部分の不足について、その50%が翌年度の割当量に追加されます。

Q研究開発投資で排出枠が増えるのはどんな場合ですか?
A

GX関連特許に結びつく研究開発費などが業種ごとの平均的な水準を上回る場合に、その差額を排出枠の前年度平均市場価格で割った量が追加されます。上限は排出枠の不足分の0.1倍です。

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