GX2040ビジョンのエネルギー政策|省エネ・電化、再エネと原子力、系統整備の方向性
GX2040ビジョンは、電力需要の増加を見すえ、徹底した省エネと電化、再エネの主力電源化と原子力の活用、火力の脱炭素化、系統整備を一体で進めるとしています。エネルギー分野の方向性と、企業に関わるポイントを整理しました。

目次
GX2040ビジョンの5章は、エネルギー、産業、くらしなど19の分野の取り組みをまとめた、ビジョンの中で最も分量の多い章です。その最初に置かれているのが、エネルギー分野の方向性です。この記事では、GX LAB 編集部が、企業の電気の使い方やコストに関わる部分を中心に整理します。
ビジョン全体の流れは、GX2040ビジョンの8つの柱で解説しています。
この記事でわかること
- GX2040ビジョンのエネルギー政策の基本的な考え方
- 省エネ・電化、再エネ、原子力、火力、系統整備それぞれの方向性
- 2026年8月に示された「パワーGX」での追加の動き
- 企業にとってのポイント
基本的な考え方:電力需要の増加を見すえる
ビジョンは、DX や GX によって電力需要が増える見込みがあるとして、エネルギー政策を産業構造・産業立地の政策と一体で進める必要があるとしています。発電所の建設には時間がかかるため、今から2040年に向けた政策を進める必要がある、という立場です。
原則は S+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)です。安全性の確保を前提に、エネルギーの安定供給を第一としたうえで、経済効率性と環境適合性を高めるとしています。そして、再生可能エネルギーか原子力かという二者択一ではなく、両方を最大限活用することが極めて重要だとしています。
需要側:徹底した省エネと電化
需要側では、徹底した省エネルギーに加えて、電化や非化石転換の割合が今まで以上に大きくなるとしています。
- 電化できる分野は、電源の脱炭素化とあわせて電化を進める
- 電化が難しい分野は、天然ガスなどへの燃料転換や、水素・アンモニアなど、CCUS を活用する
- ディマンドリスポンス(DR、需要側で電気の使い方を調整すること)や、ヒートポンプ・コージェネレーションによる熱利用の効率化も一体で進める
省エネ法のトップランナー制度やベンチマーク制度は、事業者の取り組み状況をふまえて、対象や指標を見直し続けるとしています。
供給側:再エネ、原子力、火力
再生可能エネルギーの主力電源化
地域との共生と国民負担の抑制を図りながら、最大限の導入を進めるとしています。主な内容は次のとおりです。
- ペロブスカイト太陽電池(軽くて曲げられる次世代の太陽電池)の早期の社会実装。2040年に約20GW の導入を目標とする
- 洋上風力は、2030年までに10GW、2040年までに浮体式も含めて30〜45GW の案件形成を目指す
- 次世代型の地熱技術は、2030年代の早い時期の実用化を目指す
原子力の活用
安全性の確保を大前提に、再稼働の加速に官民で取り組むとしています。あわせて、廃炉を決めた原子力発電所のサイト内で、新たな安全の仕組みを組み込んだ次世代革新炉への建て替えを、地域の理解が得られるものに限って具体化するとしています。
火力の脱炭素化
火力発電は、足元で電源構成の約7割を占めています。ビジョンは、再エネと蓄電池だけで火力を完全に代わりにするのは難しいとして、次の方針を示しています。
- 安定供給に必要な発電容量(kW)は火力全体で維持・確保する
- 非効率な石炭火力を中心に、発電量(kWh)を減らしていく
- 水素・アンモニアや CCUS を使って、火力の脱炭素化を進める
系統(送電網)の整備と蓄電池
地域間連系線を8倍以上に
地域をまたいで電気を送る地域間連系線は、今後10年程度で、過去10年間(約120万 kW)の8倍以上の規模(1,000万 kW 以上)の整備を目指すとしています。北海道と本州を結ぶ海底直流送電などが例に挙げられています。
データセンターなどの大きな需要には、「ウェルカムゾーンマップ」で早く電力供給を始められる場所を示し、立地を誘導するとしています。立地の考え方はGX産業立地の解説で紹介しています。
蓄電池の国内製造基盤
蓄電池は、再エネの主力電源化に欠かせないものとされています。2030年までに国内の製造基盤を年間150GWh にする目標に対し、これまでの支援で年間120GWh を確保する見通しが立っているとしています。電力網の「調整役」としての蓄電池の役割は、系統用蓄電池の解説や需給調整市場の解説で取り上げています。
2026年8月の「パワーGX」での動き
2026年8月26日に示された「エネルギー需給構造強靱化総合パッケージ(パワーGX)」では、中東情勢を受けて、エネルギーの調達リスクへの対応が強調されました。エネルギー分野では、次のような方向性が示されています。
- 原子力の最大限活用。今後の建て替えの見通しとして、2040年代に2〜5基、2050年代に11〜14基を挙げている
- 地域共生を前提にした再エネの導入と、ペロブスカイト・次世代型地熱・洋上風力の国内産業基盤づくり
- 電化・燃料転換、エネルギー効率向上の抜本的な強化
- 天然ガス火力などの供給力向上と最大限の活用、送電網や大規模電源の整備
企業にとってのポイント
ここからは GX LAB 編集部の見立てです。
ビジョンが需要側に求めているのは、省エネを徹底したうえで、使うエネルギーを電気や非化石のものへ切り替えていくことです。工場のボイラーや空調、車両などを入れ替える時期には、電化や高効率機器を候補に入れておくと、方針に沿った選択になります。
また、系統の整備や電源への投資には大きな費用がかかります。電気料金の中身がどう変わっていくかにも目を配っておくと、コストの見通しを立てやすくなります。法人の電気料金の考え方も参考になります。
まとめ
- エネルギー政策は、S+3E を原則に、産業構造・産業立地と一体で進める
- 需要側は、徹底した省エネに加えて電化・非化石転換の比重が大きくなる
- 再エネの主力電源化と原子力の活用を両方進め、火力は kW を維持しつつ kWh を減らす
- 地域間連系線は今後10年程度で過去10年間の8倍以上の整備を目指す
- 2026年8月の「パワーGX」で、調達リスクへの対応と GX の加速が打ち出された
出典・参考
- 内閣官房「GX2040ビジョン~脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂~」(2025年2月)
- 内閣官房 GX 実行推進室「エネルギー需給構造強靱化総合パッケージ(パワーGX)」(2026年8月26日)
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。
よくある質問
QGX2040ビジョンは再エネと原子力のどちらを重視していますか?
どちらか一方ではなく、両方を最大限活用することが極めて重要だとしています。安全性の確保を前提に、エネルギーの安定供給を第一とし、経済効率性と環境適合性を高めるS+3Eの原則に基づいて進めるとしています。
Q火力発電はなくなるのですか?
ビジョンは、再エネと蓄電池だけで火力を完全に代替するのは難しいとしています。安定供給に必要な発電容量(kW)は火力全体で維持しつつ、非効率な石炭火力を中心に発電量(kWh)を減らし、水素・アンモニアやCCUSで脱炭素化を進める方針です。
Q企業の電気の使い方にはどう関わりますか?
ビジョンは需要側に対して、徹底した省エネに加え、電化や非化石エネルギーへの転換を進めることを求めています。ディマンドリスポンス(需要側で電気の使い方を調整すること)の促進も挙げられています。設備の入れ替え時期に、電化や高効率機器を候補に入れておくと方針に沿った選択になります。