容量市場とは?「将来発電できる力」に値段がつく仕組み
容量市場では、4年後の供給力(kW)を先に取引します。電気そのものではなく、必要なときに出せる状態でいることに対価が支払われる市場です。取引の流れ、実効性テスト、年12回の発電指令、そして資料に載っている取引価格の例とその読み方を扱います。

容量市場は、3つの収益源のなかでいちばん腑に落ちにくい市場だと思います。電気を売っていないのに収入が入るからです。
5回目はここを扱います。3つの市場の関係は系統用蓄電池の収益源となる3つの市場をご覧ください。
この記事でわかること
- 容量市場が何を取引している市場なのか
- 「4年後の供給力を取引する」というスケジュールの意味
- 実効性テストと発電指令の位置づけ
- 資料に載っている取引価格の例と、その読み方
容量市場が買っているもの
容量市場は、将来(4年後)の供給力(kW)を取引する市場です。運営しているのは電力広域的運営推進機関(広域機関)とされています。
供給力とは、必要になったときに電気を出せる能力のことです。買われているのは電気そのものではなく、その日その時間に出せる状態でいてくれること、という約束。供給力を提供する事業者は、容量確保契約金額を広域機関から受け取ります。
用語注意。容量市場の「容量」は kW、つまり出力です。蓄電池の仕様の「容量 79.9MWh」は貯められる電力量(kWh 系)。ここがいちばん間違えやすいところで、同じ言葉が別のものを指しています。たとえばモデルケースとして 79.9MWh・PCS 19.96MW という設備を置くと、容量市場で見るのは 79.9MWh ではなく 19.96MW の側です。
お金の流れも押さえておくと分かりやすくなります。電気を使う家庭や企業が電気料金を小売電気事業者に払い、小売電気事業者は容量拠出金を広域機関に納める。広域機関はそれを原資として、供給力を提供する事業者に容量確保契約金額を支払う。蓄電所のオーナーは、この流れの受け取り側に立ちます。
4年前のオークションと2年前の実効性テスト
容量市場の特徴は、取引と実需給のあいだに長い時間があることです。資料では次のスケジュールが示されています。
- 1年目:メインオークション(ここで4年後の供給力が取引される)
- 3年目:実効性テスト(納品年度の2年前に受験が必要)
- 4年目:実需給年度(実際に電気を供給する年度)
実際に電気を出す4年前の時点で、収入の見通しが先に立つ。投資として見ると、ここは軽くありません。稼働してみるまで収益が読めない事業と、稼働前から一定の収入が見えている事業とでは、資金計画の組み方が変わります。
実効性テストは、約束した供給力を本当に出せるかを確かめる関門です。実需給の2年前に、設備が仕様どおり動くことを確認しておく仕組みと考えてください。
発電指令の頻度と通知
契約したからといって、放電し続けるわけではありません。資料の記載はこうです。
- 容量市場からの発令に基づいて放電し、収益を得る
- 発電指令は年間12回受領する
- 指令は3時間前に通知され、応動は3時間継続する
指令は広域機関からアグリゲーターへ、アグリゲーターから蓄電池へ制御として下り、蓄電池側からは応動報告が返ります。一連のやり取りはアグリゲーターが担う運用の一部です。
もうひとつ。資料には kWh 価値について別途売買可能と書かれています。供給力(kW)としての契約と、放電した電力量(kWh)の販売は別勘定です。容量市場で契約していても、卸電力市場での売買がなくなるわけではありません。
エリアごとの取引価格
資料には、2024年度の取引価格として次の例が挙げられています。
- 東京:14,812円/kW
- 関西:8,785円/kW
- 九州:13,177円/kW
同じ1kWの供給力でも、エリアで価格がまるで違います。東京と関西では1.7倍近い開きです。その地域でどれだけ供給力が足りていないかによって価値が変わるため、と説明されています。
感覚をつかむために、さきほどのモデルケース(PCS 19.96MW)に東京の14,812円/kWを単純に掛けてみると、約2.96億円になります。ただしこれは掛け算をしただけの数字です。落札できるかどうかも、認定される供給力がいくらになるかも別の話なので、桁の感覚を持つための計算だと思ってください。
案件の所在地がどの電力エリアかは、容量市場での収入見込みに直接効きます。案件情報に「電力エリア」が必ず書かれているのは、そういう背景があるからです。
そして、これらは資料に載っている過去の取引価格の例であって、将来の価格を約束するものではありません。オークションの結果は年度ごとに変わります。案件の想定収入がどの年度のどの価格を前提に置いているかは、必ず確認してください。
ここまでの要点
- 容量市場が取引するのは将来(4年後)の供給力(kW)。運営は電力広域的運営推進機関
- 実需給の4年前にメインオークション、2年前に実効性テスト
- 発電指令は年間12回、3時間前通知・3時間継続。kWh 価値は別途売買できる
- 取引価格はエリアで大きく違い、過去の価格が将来を保証するわけではない
案件がどの電力エリアにあるかは、GX LAB の系統用蓄電池の案件情報の基本情報から確認できます。エリア差の話と併せて見ると、立地の意味が読み取りやすくなります。
※ この記事は Fit Founder の投資家向け説明資料(2026年2月時点)をもとに書いています。取引価格は資料に記載された例であり、制度・価格は変更されることがあります。本文中の 79.9MWh・PCS 19.96MW と、そこから計算した約2.96億円は、説明のために置いた架空のモデルケースの数字で、実在の案件でも収入の見込みでもありません。
よくある質問
Q容量市場の「容量」は、蓄電池の容量(MWh)と同じですか?
違います。容量市場で取引されるのは供給力、つまり kW(出せる出力)です。蓄電池の仕様に出てくる「容量 79.9MWh」のような表記は kWh 系で、貯められる電力量を指します。同じ「容量」という語が別のものを指していて、ここが読み違えの起きやすいところです。案件資料では必ず単位まで見てください。
Q4年後の取引とは、どういう意味ですか?
実際に電気を供給する年度(実需給年度)の4年前にメインオークションがあり、そこで供給力が取引される、という意味です。Fit Founder の資料では、1年目にメインオークション、3年目に実効性テスト、4年目が実需給年度というスケジュールが示されています。落札できれば、稼働前の段階で将来の収入の見通しが立ちます。
Q実効性テストとは何ですか?
約束した供給力を本当に出せるかを確かめるテストです。資料では、納品年度(実需給年度)の2年前に受験が必要とされています。設備が仕様どおりに動くことを事前に確認する関門と考えてください。
Q発電指令はどのくらいの頻度で来ますか?
資料では年間12回受領するとされています。指令は3時間前に通知され、応動は3時間継続する形です。指令に応じて放電することで収益を得る仕組みなので、常時動き続ける必要はありません。
Q容量市場に出すと、電気そのものは売れなくなりますか?
いいえ。資料には kWh 価値について別途売買可能と記載されています。供給力(kW)としての契約と、実際に放電した電力量(kWh)の販売は別勘定です。