茨城県の大子町森林組合、森林J-クレジットのプロジェクト登録が完了 町・地元銀行と4者で進める
茨城県最北端の大子町で、大子町森林組合が管理する森林がJ-クレジット制度のプロジェクトとして正式登録されました。低コスト間伐を進めてきた森林組合が、なぜJ-クレジットに取り組むのか。その狙いと仕組みを解説します。

目次
茨城県の大子町森林組合とバイウィルが進めてきた森林J-クレジットのプロジェクトが、第68回認証委員会で、国の制度に正式に登録されました。2026年5月15日にバイウィルが発表しています。
画像出典元:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-05-15)
このプロジェクトは、大子町森林組合、茨城県大子町、株式会社常陽銀行、バイウィルの4者が結んだ「森林資源による環境価値の創出に向けた連携協定」の一環として進められています。
自治体ではなく、地域の森林組合がプロジェクトの主体になっているのが特徴です。この記事では、林業の現場を担う森林組合が、なぜJ-クレジットに取り組むのかを見ていきます。
プロジェクトのポイント
- 主体:大子町森林組合(茨城県久慈郡、代表理事組合長:松浦宣章氏)
- 連携協定:大子町森林組合、茨城県大子町(町長:高梨哲彦氏)、株式会社常陽銀行、株式会社バイウィルの4者
- 対象:大子町森林組合の森林管理によるプロジェクト
- 方法論:森林経営活動(適切な森林管理によるCO₂吸収量の増加を算定する方法)
- プロジェクトの種類:通常型
- 登録:第68回認証委員会
発表では、対象の面積や吸収見込み量は示されていません。どれだけのクレジットが見込めるかは、今後の発表で明らかになると考えられます。
低コスト間伐を進めてきた森林組合
大子町は茨城県の最北端にある町です。大子町森林組合は、この地域の林業を支えてきました。
大子町森林組合は、茨城最北端の大子町を拠点に大規模集約化施業による低コスト間伐を強力に推進し、地域の林業を支えています。今回、林業の活性化や地域のためにJ-クレジットを活用できると考え、この度の創出に取り組むこととなりました。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-05-15)
「集約化施業」とは、持ち主の異なる複数の森林をまとめて、一体的に手入れを進めるやり方です。一か所ずつ手入れするより、作業道の整備や機械の運用を効率よく進められ、間伐の費用を抑えやすくなります。
間伐をまとめて、安く進められる森林組合にとって、J-クレジットは相性のよい仕組みです。手入れを続けるほどCO₂の吸収量が増え、それがクレジットとして収入になる可能性があるからです。
手入れがCO₂の吸収を増やす仕組み
発表では、森林管理とCO₂の吸収の関係が次のように説明されています。
森林管理を適切に行うことで、明るくなった森林では植物が育ち、CO2吸収量が増加します。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-05-15)
木が混み合った森林では、光が地面まで届かず、木々も下草も育ちにくくなります。間伐で木を間引くと森林が明るくなり、残った木や下草がよく育って、CO₂をより多く吸収するようになります。
この「手入れによって増えた吸収量」を国に認めてもらい、売ることのできるクレジットに変えるのがJ-クレジットです。大子町森林組合のプロジェクトでは、手続きをバイウィルが担います。
バイウィルは、登録の申請から審査への対応、今後の認証に向けたモニタリング、販売戦略の立案と販売までを支援するとしています。クレジットの収入を林業の継承や森林の保全に回すことで、地域の中でお金が回る脱炭素につなげる考えです。
町・銀行と組む4者の連携
このプロジェクトは、森林組合だけで進めているわけではありません。2025年2月に発表された4者の連携協定が土台になっています。
- 大子町森林組合:森林の管理と手入れを担う
- 茨城県大子町:町として、ゼロカーボンシティの実現を目指す
- 常陽銀行:地元の銀行として、地域の企業などとつながる
- バイウィル:クレジットの創出から販売までの手続きを支援する
森林の現場を知る組合、地域の政策を担う町、地域経済に根ざした銀行、専門の支援事業者。それぞれの強みを持ち寄る形です。
地元の銀行がかかわる例は、ほかの地域でも見られます。鹿児島県出水市では鹿児島銀行が(出水市の森林J-クレジット)、福井県勝山市では福井銀行が(勝山市と小原生産森林組合の森林J-クレジット)、プロジェクトのきっかけをつくっています。
森林組合が主体になる意味
GX LABでは、自治体が管理する森林のプロジェクトを多く紹介してきました。大子町のように森林組合が主体になる場合、次のような強みが考えられます。
- 現場の力:日々の手入れを担う組合が主体になることで、計画した間伐を実際に進めやすい
- まとめる力:集約化施業のように、持ち主の異なる森林をまとめて扱うノウハウを持っている
- 収入の行き先:クレジットの収入を、手入れの担い手である林業の現場に直接回しやすい
福井県勝山市でも、市と地域の生産森林組合が一緒にプロジェクトを登録しています。また三重県では、林業会社の海山林友が管理する森林で、クレジットの認証まで進んでいます(海山林友の森林J-クレジット)。林業の担い手が、J-クレジットの主役になる例が増えています。
ほかの森林組合・林業事業者が参考にできること
- 自分たちの手入れの強みを生かす:間伐を計画的に進めている組合ほど、手入れによる吸収量の増加を示しやすい
- 自治体や銀行と組む:町の政策や銀行のつながりと組み合わせることで、協定から創出、販売までの道筋を描きやすい
- 手続きは専門家と進める:登録、モニタリング、認証には専門的な手続きが要る。支援事業者と役割を分ける
- 収入の使い道を先に決める:クレジットの収入を、どの森林の手入れや担い手の育成に回すかを、最初に考えておく
まとめ
- 茨城県の大子町森林組合が管理する森林が、第68回認証委員会でJ-クレジットのプロジェクトとして正式に登録された
- 大規模な集約化施業で低コストの間伐を進めてきた森林組合が、林業の活性化と地域のためにJ-クレジットに取り組む
- 大子町、常陽銀行、バイウィルとの4者の連携協定の一環で、手続きから販売まではバイウィルが支援する
- 今後はモニタリングと国の認証を経て、クレジットの発行を目指す
手入れの担い手である森林組合が、その手入れの成果を新しい収入に変えようとしています。茨城の山から生まれるクレジットが、どのように地域の林業を支えていくのか、今後の動きに注目です。
出典・参考
- 株式会社バイウィル「大子町森林組合とバイウィルの共同プロジェクト、J-クレジット制度におけるプロジェクト登録が完了」(2026年5月15日公表)
- 株式会社バイウィル「茨城県大子町、大子町森林組合、常陽銀行、バイウィルがゼロカーボンシティ実現を目指し、連携協定を締結」