長野県松本市が市有林のJ-クレジット共同創出でバイウィルと協定 約2,183haを対象に2035年まで
長野県松本市が、公募型プロポーザルでバイウィルを選び、市有林のJ-クレジット共同創出事業に関する協定を結びました。約2,183haの市有林を対象に、2035年まで続く長期の取り組みと役割分担を解説します。

目次
長野県松本市と株式会社バイウィルが、2026年8月28日に「松本市有林J-クレジット共同創出事業に関する協定」を締結しました。9月29日にバイウィルが発表しています。
松本市が持つ市有林のうち約2,183haを対象に、2035年3月31日までの期間、森林由来のJ-クレジットをつくる手続きからモニタリング、発行後の販売・流通までを、両者で一緒に運営します。
今回の協定で特徴的なのは、松本市が公募型プロポーザルという方法で相手を選んだことです。この記事では、選定の流れと、長期にわたる役割分担を見ていきます。
協定のポイント
- 締結日:2026年8月28日
- 連携先:長野県松本市(市長:臥雲義尚氏)、株式会社バイウィル
- 対象:松本市が持つ市有林のうち約2,183ha
- 期間:2035年3月31日まで
- 内容:森林由来のJ-クレジットの創出と、つくったクレジットの販売または買取り
- 選定方法:公募型プロポーザルでの審査を経て、バイウィルが選ばれた
公募で相手を選んだ市
協定に至った経緯は、発表で次のように説明されています。
こうした中、松本市は市有林が有するCO2吸収能力をJ-クレジットとして可視化し、得られた売却益を健全な森林整備へと還元する共同創出事業を計画。公募型プロポーザルにおける審査を経てバイウィルが選定され、松本市有林における森林由来J-クレジットの創出ならびに創出したJ-クレジットの販売または買取りを目的とした本協定の締結に至りました。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-09-29-2)
公募型プロポーザルとは、自治体が事業の提案を広く募り、提案の内容を審査して相手を選ぶ方法です。値段だけでなく、進め方や実績、体制などを比べて選べるのが特徴です。
これまで紹介してきた自治体の取り組みの多くは、地元の銀行の紹介がきっかけでした。松本市は、自ら事業を計画し、公募で相手を選ぶという形をとっています。市が主体的に事業を組み立てたことがうかがえます。
背景には、豊かな自然や森林資源を次の世代に引き継ぐため、市有林を適切に管理し、持続可能な森林経営を続けるという課題があります。クレジットの売却益を森林整備に回すことで、その費用をまかなう狙いです。
役割分担:市は森林を、バイウィルは手続きと販売を
協定では、両者の役割がはっきり分けられています。要点を言い換えると次のとおりです。
松本市
- 森林に関する必要な情報を提供する
- 森林経営計画をつくる
- 森林の整備と適切な管理を行う
バイウィル
- 簡易調査と、使える方法論の確認
- プロジェクト計画書の作成
- 第三者機関の審査への対応
- モニタリングと検証報告書の作成
- クレジットの認証・登録の手続き、管理、販売(期間8年)
市は森林の持ち主として、手入れそのものに責任を持つ。クレジットにするための専門的な手続きと販売は、バイウィルが担う。それぞれが得意なことに集中できる分担です。
協定の目的には、つくったクレジットの「販売」とあわせて「買取り」も入っています。バイウィルが市場で販売するだけでなく、自ら買い取る選択肢も含めることで、「つくっても売れない」という市の不安を和らげる形になっていると考えられます。
松本市をモデルに、長野県内へ
発表では、今後の展望として次のように書かれています。
バイウィルは、本協定を通じ、松本市有林の環境価値化を推進するとともに、これをモデルケースとして長野県内をはじめとする周辺地域への支援拡大を目指してまいります。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-09-29-2)
長野県は森林の多い県です。バイウィルは、この地域で自治体や森林組合との連携をさらに強め、森林を環境価値と収益を生む「気候資産」として生かす仕組みを広げるとしています。
ほかの自治体の事例と比べると
- 福井県勝山市:市と森林組合が管理する2,307.05haの森林を登録。地元の銀行とテレビ局がきっかけ(勝山市と小原生産森林組合の森林J-クレジット)
- 山口県美祢市:市有林のJ-クレジットに向けて、地元の金融グループを加えた4者で協定(美祢市の連携協定)
- 長野県松本市(今回):約2,183haの市有林を対象に、公募で選んだバイウィルと2035年までの協定
面積の規模は勝山市と近く、市有林を対象にする点は美祢市と共通しています。松本市の特徴は、公募という選び方と、2035年までの期間や役割分担を協定で明確にしている点です。
鏡野町では、認証されたクレジットを地元企業が8年間の長期契約で購入しています(鏡野町の森林J-クレジット)。松本市でも、発行されたクレジットをどう届けていくかが今後の焦点になります。
ほかの自治体が参考にできること
- 公募で比べて選ぶ:自ら事業を計画し、公募型プロポーザルで提案を比べることで、市の方針に合う相手を選べる
- 役割分担を協定に書く:市が担うこと、支援事業者が担うことを協定で明確にしておくと、長い期間でも進めやすい
- 長期で考える:森林のクレジットは、登録から認証、販売まで何年もかかる。松本市は2035年までの期間を協定で決めている
- 売れ残りへの備えを考える:販売だけでなく買取りの選択肢を含めるなど、つくったクレジットの行き先を協定の段階から考えておく
まとめ
- 長野県松本市とバイウィルが、2026年8月28日に「松本市有林J-クレジット共同創出事業に関する協定」を結んだ
- 対象は市有林のうち約2,183ha。2035年3月31日までの期間、創出の手続きから販売・流通までを一緒に運営する
- 松本市は公募型プロポーザルでの審査を経て、バイウィルを選んだ
- 市は森林経営計画や森林の整備を、バイウィルは調査から審査対応、モニタリング、登録・認証、販売までを担う
市が自ら事業を組み立て、公募で相手を選んだ松本市の取り組みが、長野県内に広がるモデルになるのか、今後の動きに注目です。
出典・参考
- 株式会社バイウィル「バイウィル、長野県松本市と『松本市有林J-クレジット共同創出事業に関する協定』を締結」(2026年9月29日公表)