山口県美祢市と山口銀行・YMFGグロースパートナーズ・バイウィルが連携協定 市有林からJ-クレジットを創出へ
山口県美祢市、山口銀行、YMFGグロースパートナーズ、バイウィルの4者が、市有林のJ-クレジット創出・活用に関する連携協定を結びました。地域の金融グループが支える森林クレジットの構想を解説します。

目次
山口県美祢市、株式会社山口銀行、株式会社YMFGグロースパートナーズ、株式会社バイウィルの4者が、2026年6月25日に「美祢市有林のJ-クレジット創出・活用に関する連携協定書」を締結しました。締結式は美祢市役所で行われ、7月2日にバイウィルが発表しています。
画像出典元:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-07-02)
協定の名前のとおり、対象は美祢市が持つ森林(市有林)です。森林のCO₂吸収量をJ-クレジットに変え、脱炭素に取り組む企業へつなぐことを目指します。
山口銀行とYMFGグロースパートナーズは、どちらも山口フィナンシャルグループの会社です。この記事では、地域の金融グループが支える森林クレジットの構想を見ていきます。
協定のポイント
- 締結日:2026年6月25日(美祢市役所で締結式)
- 連携先:山口県美祢市(市長:篠田洋司氏)、株式会社山口銀行、株式会社YMFGグロースパートナーズ、株式会社バイウィル
- 目的:適切な森林管理を行い、J-クレジットを創出・活用することで、脱炭素社会の実現と地域の課題解決に役立てる
- 最初の取り組み:市の森林が持つCO₂吸収能力をJ-クレジットとして見える形にする
協力する分野を言い換えると、次のとおりです。
- 環境価値に関する情報・サービス・ノウハウを提供する
- J-クレジット制度を使って環境価値をつくる
- J-クレジットを地域の中で流通させる
- そのほか、協定の目的に役立つと双方が認めたことに取り組む
背景にある「カーボンニュートラルチャレンジシティ宣言」
美祢市は2025年5月12日に、2050年までにCO₂の排出量を実質ゼロにすることを目指す「カーボンニュートラルチャレンジシティ宣言」を行いました。省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入、森林の経営・管理などに取り組んでいます。
宣言から約1年で、森林を生かした新しい取り組みとして、今回の協定に至りました。
今回、美祢市へバイウィルが紹介されたことで、美祢市においては新たな取り組みとなるJ-クレジット創出・活用を進めるため、本連携協定に至りました。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-07-02)
森林の吸収量を、必要とする企業へ
発表では、クレジットのつくり方と使い道について、次のように書かれています。
J-クレジットの創出方法(方法論)については、美祢市の森林が持つCO2吸収能力をJ-クレジットとして可視化し、それを必要とする企業へと繋ぐことで、両者の脱炭素目標達成に貢献します。 >出典:株式会社バイウィル(https://www.bywill.co.jp/news/2026-07-02)
市は森林の手入れを続けることでクレジットをつくり、企業はそのクレジットを買って自社の脱炭素に役立てる。売ったお金は、また森林の手入れに回せます。市と企業の双方にとって、脱炭素の目標に近づく仕組みです。その後は、ほかの方法論でのクレジット創出にも広げる想定だとしています。
バイウィルは、プロジェクトの登録・申請からモニタリング、クレジットの販売までを支援します。販売では、つくったクレジットを地域の中で使う「地産地消」で、美祢市をはじめとする地域の脱炭素を進めるとしています。
地域の金融グループが入口に
今回の協定で特徴的なのは、山口フィナンシャルグループが深くかかわっている点です。
- YMFGグロースパートナーズ(旧ワイエムコンサルティング)とバイウィルは、2024年11月18日に顧客紹介契約を結んでいる
- バイウィルは、2025年に行った資金調達(シリーズB)で、グループのYMFGキャピタルと資本提携している
- こうした関係のなかで、美祢市へバイウィルが紹介された
発表では、今後も山口フィナンシャルグループとの連携を強め、地域の金融機関のネットワークを生かしながら、J-クレジットを起点とした脱炭素の取り組みを広げるとしています。
地域の銀行は、自治体とも地元の企業とも深い関係を持っています。クレジットの「つくり手」である自治体と、「買い手」になりうる地元企業の両方とつながれることが、金融機関がかかわる大きな意味といえます。
森林クレジットの先行例
美祢市は、協定を結んだ段階です。同じく自治体の森林でクレジットに取り組む地域には、次のような先行例があります。
- 登録を終えた段階:秋田県由利本荘市、鹿児島県出水市。どちらも市が管理する森林が、国の制度にプロジェクトとして登録された(由利本荘市の森林J-クレジット、出水市の森林J-クレジット)
- 認証を受け、買い手も決まった段階:岡山県鏡野町。地元のガス会社が8年間の長期契約で購入(鏡野町の森林J-クレジット)
出水市では鹿児島銀行が、鏡野町では中国銀行がきっかけをつくりました。美祢市でも、地域の金融機関が入口となった流れは共通しています。
ほかの自治体が参考にできること
- 宣言を具体策につなげる:ゼロカーボンの宣言をしたあと、森林など地域の資源を生かす具体的な取り組みとして、J-クレジットを検討する
- 地元の金融機関に相談する:地域の銀行やそのグループ会社が、支援事業者や買い手候補とつないでくれることがある
- 登録までの時間を見込む:先行例では、協定から登録までに1年以上かかっている。森林の記録集めや計画づくりの時間を見ておく
- 買い手と一緒に考える:クレジットを「必要とする企業へつなぐ」ことまで、協定の段階から視野に入れておく
まとめ
- 山口県美祢市、山口銀行、YMFGグロースパートナーズ、バイウィルの4者が、2026年6月25日に市有林のJ-クレジットに関する連携協定を結んだ
- 市の森林のCO₂吸収能力をクレジットとして見える形にし、必要とする企業へつなぐことを目指す
- 山口フィナンシャルグループとバイウィルの連携が、協定のきっかけになった
- バイウィルが登録から販売までを支援し、「地産地消」で地域の脱炭素を進める
地域の金融グループと手を組んだ美祢市の森林が、どのようにクレジットを生み、企業とつながっていくのか、今後の動きに注目です。
出典・参考
- 株式会社バイウィル「山口県美祢市、山口銀行、YMFGグロースパートナーズとバイウィルが『美祢市有林のJ-クレジット創出・活用に関する連携協定書』を締結」(2026年7月2日公表)
- 美祢市「美祢市カーボンニュートラルチャレンジシティ宣言」
- 美祢市「美祢市 地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」