エネルギー白書に見る福島復興の進捗|廃炉・帰還・新エネ社会構想の現在地
エネルギー白書2025は第1章で福島復興の進捗をまとめています。燃料デブリの試験的取出し、ALPS処理水、帰還困難区域の避難指示解除、福島イノベーション・コースト構想、再エネと水素の「福島新エネ社会構想」の現在地を整理しました。

目次
エネルギー白書2025は、第1部の最初の章で「福島復興の進捗」を取り上げています。国は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験と反省、教訓を、エネルギー政策の原点としています。この記事では、GX LAB 編集部が、白書が示す福島復興の現在地を、廃炉、帰還、新しい産業とエネルギーの3つの面から整理します。
白書全体の流れは、エネルギー白書2025のポイントで解説しています。
この記事でわかること
- 福島第一原子力発電所の廃炉の進み具合
- ALPS 処理水の放出とその後の動き
- 帰還困難区域の避難指示の解除に向けた取り組み
- 福島イノベーション・コースト構想と、福島新エネ社会構想
廃炉に向けた取り組み
燃料デブリの試験的取出し
白書は、福島第一原子力発電所での燃料デブリ(事故で溶けて固まった燃料など)の取出しを、世界にも前例のない、技術的に難易度の高い作業だとしています。
- 2024年9月、「テレスコ式装置」を使った2号機での燃料デブリの試験的取出しに着手し、廃炉の工程を定めた中長期ロードマップの「第3期」に移った
- 2024年11月、2号機で試験的取出しに成功
- 2025年4月、2回目の試験的取出しに成功
一歩一歩着実に作業を進めることが重要だとしています。
ALPS 処理水
- モニタリングの結果や国際原子力機関(IAEA)の評価から、放出の安全性が確認されているとしている
- 2025年2月14日、ALPS 処理水の放出が終わったタンクの解体に着手。跡地には、燃料デブリの取出し作業に関連する施設を置く予定
- 2025年4月までに、中国を含む第三国の分析機関の関係者などが参加する IAEA の枠組みのもとで、追加的なモニタリングを3回実施
- 2025年3月、日本と中国は、分析結果に異常がないことを前提に、日本産水産物の輸入再開に向けて協議を進めることで一致した
帰還困難区域の避難指示の解除
白書によると、避難の対象者は、2013年8月の8.1万人から、2023年11月には0.8万人まで減りました。
- 2020年3月までに、帰還困難区域以外のすべての地域で避難指示を解除
- 2023年11月までに、「特定復興再生拠点区域」の全域で避難指示を解除
- 2023年6月、2020年代をかけて帰還を希望するすべての住民が帰還できるよう、「特定帰還居住区域制度」を創設
- 2025年3月までに、大熊町・双葉町・浪江町・富岡町・南相馬市の5市町の「特定帰還居住区域復興再生計画」が認定され、除染やインフラ整備などが進められている
また、飯舘村と葛尾村では2025年3月、堆肥製造や風力発電などの地域資源を活用した復興に必要な土地の活用に向けて、避難指示が解除されました。
新しい産業とエネルギー
福島イノベーション・コースト構想
浜通り地域などで新しい産業をつくる構想です。各種の補助事業や、「福島ロボットテストフィールド」などの事業環境の整備を通じて、新産業の創出を目指しています。重点分野は、廃炉、ロボット・ドローン、エネルギー・環境・リサイクル、農林水産業、医療関連、航空宇宙の6つです。
構想の中核として、福島国際研究教育機構(F-REI)が、研究開発、産業化、人材育成に取り組んでいます。エネルギー分野では、福島を世界のカーボンニュートラルの先駆けの地にするための技術実証などを行うとしています。
福島新エネ社会構想
2016年に、福島県全体を未来の新エネ社会を先取りするモデルの創出拠点にすることを目指して策定された構想です。2024年9月には「加速化プラン2.0」が策定され、次のような方向性が打ち出されました。
- 完成した共用送電線を使った、再エネのさらなる導入拡大
- 福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)と連携した、水素の社会実装の加速
白書では、ペロブスカイト太陽電池の柔軟さを生かして、Jヴィレッジの円錐形の芝生に設置し、地面や曲面への導入の可能性を検証している事例も紹介されています。ペロブスカイト太陽電池の導入方針は、再エネの主力電源化と5つの課題の解説で、ほかの次世代技術は次世代エネルギー革新技術の解説で取り上げています。
まとめ
- 福島第一原子力発電所の燃料デブリは、2024年11月と2025年4月に試験的取出しに成功した
- ALPS 処理水の放出が終わったタンクの解体が、2025年2月に始まった
- 避難の対象者は8.1万人(2013年8月)から0.8万人(2023年11月)に減った
- 特定帰還居住区域制度で、2020年代をかけて帰還を希望するすべての住民の帰還を目指す
- 福島新エネ社会構想の「加速化プラン2.0」で、再エネと水素の社会実装を加速する
出典・参考
- 資源エネルギー庁「エネルギー白書2025について(令和6年度エネルギーに関する年次報告)」(概要版)
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。
よくある質問
Q燃料デブリの取出しはどこまで進んでいますか?
白書によると、2024年9月に2号機で試験的取出しに着手し、2024年11月に試験的取出しに成功、2025年4月に2回目の試験的取出しに成功しました。世界にも前例のない難易度の高い作業で、一歩一歩着実に進めることが重要とされています。
Q避難の対象者はどのくらい減りましたか?
2013年8月の8.1万人から、2023年11月には0.8万人まで減りました。2020年代をかけて、帰還を希望するすべての住民が帰還できるよう、特定帰還居住区域制度にもとづく取り組みが進められています。
Q福島新エネ社会構想とは何ですか?
2016年に策定された、福島県全体を未来の新エネ社会を先取りするモデルの創出拠点にすることを目指す構想です。2024年9月の「加速化プラン2.0」では、共用送電線を使った再エネの導入拡大や、福島水素エネルギー研究フィールドと連携した水素の社会実装の加速が打ち出されました。