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エネルギー白書のポイント|日本のエネルギーを取り巻く変化とGX政策の全体像

エネルギー白書2025は、福島復興の進捗、GX・カーボンニュートラルに向けた日本の取り組み、主要10か国・地域の動向をまとめた国の年次報告です。経済産業省のGX政策の資料とあわせて、白書のポイントとGX政策の枠組みを整理しました。

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深い青と白の司令デッキの内部。六角形パネルの天井と光る地形表示の卓があり、大きな窓の外に太陽光パネル群、白いコンテナ型蓄電池の列、送電鉄塔、都市が見える
目次

エネルギー白書は、エネルギー政策基本法にもとづいて国が毎年まとめる法定の白書です。2004年から作られていて、「エネルギー白書2025」(令和6年度エネルギーに関する年次報告)が22回目にあたります。

この記事では、GX LAB 編集部が、エネルギー白書2025の概要と、経済産業省がまとめた「我が国のグリーントランスフォーメーション政策」の資料をもとに、日本のエネルギーを取り巻く変化と GX 政策の枠組みを整理します。福島の復興や次世代技術、主要国の動向などは、シリーズの各記事で詳しく解説しています。

この記事でわかること

  • エネルギー白書とは何か、2025年版の構成
  • 日本のエネルギーを取り巻く環境の変化
  • ワット・ビット連携など、DX・GX をふまえた政策
  • GX 政策の枠組み(GX 推進戦略と成長志向型カーボンプライシング)
  • 企業の担当者が押さえておきたいポイント

エネルギー白書とは

国の法定白書

エネルギー白書は、エネルギーをめぐる動向の分析と、国が講じた施策をまとめた年次報告です。2025年版は2部構成です。

  • 第1部:エネルギーを巡る状況と主な対策(各年度の動向をふまえた分析)
  • 第2部:2024年度にエネルギー需給に関して講じた施策の状況(施策集)

なお、前年度まで掲載していた国内外のエネルギーに関するデータ集は、資源エネルギー庁のホームページに掲載する形に変わっています。

第1部の3つの章

第1部は、次の3つの章で組み立てられています。

  1. 福島復興の進捗
  2. GX・2050年カーボンニュートラルの実現に向けた日本の取組
  3. 主要10か国・地域のカーボンニュートラル実現に向けた動向とその背景

第1章は福島復興の進捗の解説で、第3章は主要国の脱炭素目標と動向の解説で取り上げています。

第2部の11の章

第2部では、2024年度にエネルギー需給に関して講じた施策が、次の11の章にまとめられています。

  • 安定的な資源確保のための総合的な政策の推進
  • 徹底した省エネルギー社会の実現と、スマートで柔軟な消費活動の実現
  • 地域と共生した再生可能エネルギーの最大限の導入
  • 原子力政策の展開
  • 燃料の効率的・安定的な利用のための環境の整備
  • 市場の垣根を外していく供給構造改革などの推進
  • 国内エネルギー供給網の強靱化
  • カーボンニュートラル実現に向けた水素・アンモニアの導入拡大
  • 総合的なエネルギー国際協力の展開
  • 戦略的な技術開発の推進
  • 国民各層とのコミュニケーションとエネルギーに関する理解の深化

日本のエネルギーを取り巻く環境の変化

白書は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵略以降、中東情勢の緊迫化や、米国のトランプ政権によるパリ協定からの脱退表明など、世界のエネルギーを取り巻く環境が大きく変わったとしています。そのうえで、次の4つの観点から対応が必要だとしています。

1. エネルギー安全保障の要請の高まり

  • 日本のエネルギー自給率は15.3%(2023年度)で、G7の中で最も低い水準
  • 発電の7割程度を化石エネルギーに頼っている
  • ウクライナ侵略以降、LNG の需給ひっ迫と価格高騰が、貿易収支に大きな影響を与えた
  • 脱炭素電源の拡大は、G7各国との産業立地の競争力の観点からも欠かせない

白書の資料では、G7各国のエネルギー自給率も比べられています(日本は2023年度、ほかの国は2022年のデータ)。

  • カナダ:188.6%
  • アメリカ:106.7%
  • イギリス:67.5%
  • フランス:49.3%
  • ドイツ:35.3%
  • イタリア:22.4%
  • 日本:15.3%

資源国のカナダ・アメリカが100%を超える一方、日本は G7の中で最も低く、エネルギーの多くを輸入に頼っていることがわかります。

2. DX・GX による電力需要の増加の可能性

日本の電力需要は、省エネを見込んでもなお、データセンターや半導体工場の新設・増設などで増えると見込まれています。

3. 気候変動の野心の維持と、現実的で多様な対応

各国は1.5℃目標に整合する2050年カーボンニュートラルの目標を維持しつつ、経済性や安定供給とのバランスをとる現実的な路線へ転換する動きも見られるとしています。

4. エネルギー政策と産業政策の一体化

日本は、GX 実現に向けた基本方針の策定以降、10年間で20兆円規模の先行投資支援策や成長志向型カーボンプライシング構想を実行に移し、2025年2月に「GX2040ビジョン」を策定しました。EU も「ネットゼロ産業法」(2024年2月)などで、域内のクリーン産業への支援を強めています。

DX・GX をふまえたエネルギー・産業政策

ワット・ビット連携

白書は、データセンターの立地と脱炭素電源の立地にずれがあることを課題に挙げています。

  • データセンターは、データを使う都市部の近くに集中している
  • データセンターは脱炭素電源より建設のリードタイムが短い。白書の資料では、データセンターの建設期間が1〜2年程度なのに対し、原子力は5〜15年程度などとされており、電源の整備が追いつきにくい
  • 脱炭素電源の供給力も、地域ごとに偏っている

そこで、電力インフラ、データセンターの立地、通信インフラが全体として最適になるよう、電力と通信を一体で整える「ワット・ビット連携」を進めるとしています。2025年3月には官民の「ワット・ビット連携官民懇談会」が立ち上がり、2025年6月に今後の検討の方向性がまとめられました。データセンターの電力需要は、GX LAB の「パワーGX」シリーズでも取り上げています。

需要家が自ら脱炭素電力を確保する時代へ

白書は、データセンターを含め、脱炭素電力などのクリーンエネルギーを使った製品・サービスが付加価値を生む時代になると予想し、需要家が自ら脱炭素電力を活用・確保する動きを加速させる必要があるとしています。

次世代エネルギー革新技術

白書は、2050年カーボンニュートラルに向けて、日本企業が持つ次世代エネルギー技術のイノベーションに取り組み、ビジネスにつなげることが欠かせないとしています。ペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力、光電融合、水素等、次世代革新炉、次世代型地熱発電などが紹介されています。詳しくは次世代エネルギー革新技術の解説にまとめています。

GX 政策の枠組み

経済産業省の資料「我が国のグリーントランスフォーメーション政策」は、GX 政策の枠組みを次のように整理しています(2023年に GX 推進戦略が閣議決定されたころの資料です)。

GX が求められる背景

  • 期限付きのカーボンニュートラル目標を表明する国・地域が急増し、その GDP の合計は世界全体の約94%を占める(資料作成時点)
  • 金融市場の動きも重なり、あらゆる産業が脱炭素社会に向けた大競争時代に入り、環境対応の成否が企業・国家の競争力に直結する時代になった
  • 米国のインフレ削減法、EU のグリーンディール産業計画など、各国で GX への投資促進策が加速している

世界各国の GX への取り組み

資料では、各国の投資促進策の例として次のものが紹介されています(金額は資料作成時点の円換算)。

  • 米国:インフレ削減法(2022年8月)で、国による約50兆円の支援。10年間にわたる支援を約束することで予見可能性を確保し、生産量に比例した投資減税も取り入れた
  • EU:排出量取引制度(EU-ETS、2005年〜)、グリーン・ディール産業計画(2023年2月)、ネット・ゼロ産業法案などで、官民で約140兆円の投資
  • ドイツ:気候変革基金(案)で、国による約33兆円の支援を検討
  • 韓国:排出量取引制度(K-ETS、2015年〜)や投資・研究開発減税で、官民7兆円超の投資

日本の削減の進み具合

資料は、日本は1.5℃目標と整合する形で2030年度に2013年度比46%削減を目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けており、これまでに約20%を削減して着実に進めてきたとしています。新しい目標(2035年度60%、2040年度73%)は、GX LAB の「地球温暖化対策計画」シリーズで解説しています。

GX 推進法が定めたこと

2023年に成立した GX 推進法は、次のことを法律で定めています。

  • GX 推進戦略の策定・実行と、進み具合をふまえた見直し
  • GX 経済移行債の発行(2023年度から10年間)
  • 化石燃料賦課金(2028年度から):化石燃料の輸入事業者などに、輸入する化石燃料に由来する CO2の量に応じて賦課する
  • 発電事業者への有償オークション(2033年度から):排出枠の一部を有償で割り当て、特定事業者負担金を徴収する
  • GX 推進機構の設立:民間の GX 投資の金融支援、賦課金・負担金の徴収、排出量取引制度の運営などを担う

GX 経済移行債は、化石燃料賦課金と特定事業者負担金によって償還するとされています。賦課金と有償オークションは、すぐに導入するのではなく、GX に取り組む期間を設けたうえで、エネルギーに関わる負担の総額を中長期的に減らしていく中で、低い負担から導入して徐々に引き上げる、という考え方です。

GX 推進戦略の2つの柱

  1. エネルギー安定供給の確保を大前提とした GX の取り組み:徹底した省エネ、再エネの主力電源化、原子力の活用、水素・アンモニアなどの取り組み
  2. 「成長志向型カーボンプライシング構想」などの実現・実行:GX 経済移行債を使った10年間で20兆円規模の先行投資支援、排出量取引制度(2026年度〜)、発電事業者への有償オークション(2033年度〜)、化石燃料賦課金(2028年度〜)、新たな金融手法の活用、国際展開戦略、社会全体の GX の推進

投資促進策とトランジション・ファイナンス

GX 経済移行債による投資促進策には、支援の対象を決める基本原則があります。これはGX投資促進策の基本原則の解説で整理しています。また、日本は国として世界で初めて「トランジション・ボンド」を発行し、段階的な脱炭素への移行を支える資金調達を広げています。この仕組みはトランジション・ファイナンスの解説で取り上げています。

企業の担当者が押さえておきたいポイント

ここからは、資料の内容をふまえた GX LAB 編集部の見立てです。

エネルギーの「自給率」と「調達リスク」を意識する

白書が示すように、日本のエネルギー自給率は G7で最も低く、発電の約7割を化石エネルギーに頼っています。燃料価格の変動は電気代やガス代に直接響くため、省エネや再エネの自家消費で外部からの調達を減らすことは、脱炭素だけでなくコストの安定にもつながります。

脱炭素電力を「自ら確保する」発想へ

白書は、需要家が自ら脱炭素電力を確保する動きを加速させる必要があるとしています。自家消費型の太陽光や、再エネ電力の契約などは、取引先から脱炭素の取り組みを求められたときの答えにもなります。

白書の第2部も「施策の地図」として使える

白書の第2部は、国がその年度に講じたエネルギー施策を分野ごとにまとめた資料です。自社に関わる分野(省エネ、再エネ、水素など)の章を見ると、どんな支援や制度が動いているかを一覧で確かめられます。補助金や制度を探す入り口としても役立ちます。

海外の動きが取引条件を変える

主要国では、排出量取引制度や炭素国境調整措置(CBAM)など、炭素に価格をつける仕組みが広がっています。白書によると、EU は2026年1月に CBAM の本格適用を予定しており、輸入品にも製造時の CO2排出量に応じた負担が求められるようになります。輸出や海外の取引先を持つ企業は、各国の制度の動きにも目を配っておくことをおすすめします。

まとめ

  • エネルギー白書はエネルギー政策基本法にもとづく法定白書で、2025年版は22回目
  • 第1部は、福島復興、GX・カーボンニュートラルに向けた日本の取り組み、主要10か国・地域の動向の3章構成
  • 日本のエネルギー自給率は15.3%で G7最低。発電の約7割が化石エネルギー
  • データセンターと脱炭素電源の立地のずれに対応する「ワット・ビット連携」が進む
  • GX 政策は、エネルギー安定供給を前提とした GX と、成長志向型カーボンプライシングの2つが柱

出典・参考

※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。

よくある質問

Qエネルギー白書とは何ですか?
A

エネルギー政策基本法にもとづいて国が毎年まとめる法定の白書です。2004年から作られており、エネルギー白書2025(令和6年度エネルギーに関する年次報告)は22回目にあたります。第1部でエネルギーを巡る動向の分析、第2部で国が講じた施策をまとめています。

Q日本のエネルギー自給率はどのくらいですか?
A

白書によると、2023年度で15.3%と、G7各国の中で最も低い水準です。発電の7割程度を化石エネルギーに頼っています。

Qワット・ビット連携とは何ですか?
A

電力インフラ、データセンターの立地、通信インフラが全体として最適になるよう、電力と通信を一体で整える考え方です。データセンターが都市部に集中し、脱炭素電源の立地とずれていることなどに対応するため、2025年3月に官民の懇談会が立ち上がりました。

QGX推進戦略の柱は何ですか?
A

経済産業省の資料では、エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXの取り組み(省エネ、再エネの主力電源化、原子力の活用など)と、成長志向型カーボンプライシング構想などの実現・実行(GX経済移行債による先行投資支援、排出量取引制度、化石燃料賦課金など)の2つが柱とされています。

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