GX投資促進策の基本原則|GX経済移行債はどんな投資を支援するのか、分野別の投資規模の目安
GX経済移行債による「投資促進策」には、支援の対象を決める4つの基本条件と、成長と削減の両面から事業を選ぶ類型があります。経済産業省の資料をもとに、支援の考え方、排出の多い部門、分野別の投資規模の目安、GX関連予算の例を整理しました。

目次
国は、GX 経済移行債を使って、10年間で20兆円規模の先行投資支援を行うとしています。では、この支援はどんな投資を対象にするのでしょうか。経済産業省の資料「我が国のグリーントランスフォーメーション政策」は、GX 推進戦略で定められた「投資促進策」の基本原則を示しています。この記事では、GX LAB 編集部がその考え方を整理します。
なお、資料は2023年に GX 推進戦略が閣議決定されたころのもので、金額などは資料作成時点の暫定値です。
白書と GX 政策の全体像は、エネルギー白書2025のポイントで解説しています。
この記事でわかること
- GX 経済移行債の「投資促進策」の4つの基本条件
- 支援の対象を選ぶ「類型」の考え方
- 排出の多い部門と、分野別の投資規模の目安
- GX 関連予算の例
GX 経済移行債とは
GX 経済移行債は、GX 推進戦略の実現に向けた先行投資を支援するため、2023年度から10年間で発行される国債です。単年度の措置ではなく、国が複数年度にわたって約束する投資促進策を可能にするものとされています。償還は、化石燃料賦課金と特定事業者負担金によって、2050年度までに行うとされています。
投資促進策の4つの基本条件
資料によると、GX 経済移行債による投資促進策は、次の4つの基本条件を満たすものが対象です。
- 企業が経営革新にコミットすることを大前提に、技術の革新性や事業の性質などから、民間企業だけでは投資判断が本当に難しい事業であること
- 産業競争力の強化・経済成長と、排出削減の両方に貢献するもの。市場規模・削減規模の大きさや、国内供給の必要性などから優先順位をつけ、優先順位の高いものから支援すること
- 企業の投資や需要側の行動を変える仕組みにつながる、規制・制度面の措置と一体で行うこと
- 国内の人的・物的投資の拡大につながるもの(資源循環や内需だけの市場など、国内経済での価値の循環を促す投資も含む)。海外で完結する設備投資など国内の排出削減に効かない事業や、クレジットなど目標達成にしか効果がない事業は、対象外とすること
支援の対象を選ぶ「類型」
さらに、「産業競争力強化・経済成長」と「排出削減」のそれぞれから1つずつ当てはまる事業が、支援の候補になります。
産業競争力強化・経済成長(A〜C)
- A:技術や事業の革新性があり、外需の獲得や内需の拡大を見すえた成長投資
- B:高度な技術で、化石原燃料・エネルギーの削減と収益性の向上の両方に役立つ成長投資
- C:全国規模の市場が想定される主要な物品の、導入初期の国内需要対策(供給側の投資も伴うもの)
排出削減(1〜3)
- 1:技術革新を通じて、将来の国内の削減に貢献する研究開発投資
- 2:技術的に削減効果が高く、直接的に国内の排出削減に役立つ設備投資など
- 3:全国規模で需要があり、高い削減効果が長く続く主要な物品の、導入初期の国内需要対策
排出の多い部門に取り組む
資料は、GX の実現には排出量の多い部門に取り組む必要があるとしています。電気・熱の使用を各部門に配分した後の排出量の内訳(2021年度ベース)は、運輸部門17.4%、業務部門等17.9%、家庭部門14.7%、鉄鋼13.6%、化学工業5.4%、そのほかの産業部門16.1%などです。発電などのエネルギー転換部門に加え、鉄・化学などの産業部門や、家庭・運輸・業務などくらしに関わる部門の削減が欠かせないとしています。
分野別の投資規模の目安
資料には、今後10年間の官民の GX 投資の規模の目安が示されています(一定の仮定を置いて機械的に算出した暫定値)。
- エネルギー供給側:約50兆円〜。再エネ約20兆円〜、次世代ネットワーク(系統・調整力)約11兆円〜、水素・アンモニア約7兆円〜、CCS 約4兆円〜、カーボンリサイクル燃料約3兆円〜、次世代革新炉約1兆円〜など
- エネルギー需要側:約100兆円〜。産業部門約70兆円〜、くらし関連部門約60兆円〜(一部重複)。自動車・蓄電池約34兆円〜、住宅・建築物約14兆円〜、脱炭素目的のデジタル投資約12兆円〜、素材(鉄鋼・化学・セメント・紙パルプ)約8兆円〜など
これらをもとに、今後10年間の「分野別投資戦略」を定め、投資促進策を具体化していくとしています。
GX 関連予算の例
資料では、令和4年度補正予算と令和5年度当初予算を合わせて約1.6兆円の GX 関連予算の例が紹介されています。
- GI 基金の積み増し:約3,000億円
- 蓄電池の製造に関わる設備投資の支援:約3,300億円
- 省エネ・脱炭素に役立つ光電融合などの半導体技術の開発:約750億円
- 住宅の断熱性能を高める高効率な設備の導入支援:約1,000億円
- 非化石転換や DR 対策を伴う先進的な省エネ投資の支援:約250億円(国庫債務負担5年で1,375億円)
その後の投資の進み具合は、GX投資の進捗の解説で紹介しています。
企業にとっての意味
ここからは GX LAB 編集部の見立てです。
基本条件にあるように、国の支援は「成長」と「削減」の両方に役立つ事業が対象で、規制・制度と一体で進められます。補助金を検討するときは、自社の投資が国内の排出削減にどう効くか、事業の成長にどうつながるかを説明できるようにしておくと、支援の考え方に沿った申請につながります。成長志向型カーボンプライシング全体の仕組みは、成長志向型カーボンプライシングの解説で整理しています。
まとめ
- GX 経済移行債は2023年度から10年間発行され、2050年度までに償還される
- 投資促進策は、民間だけでは投資判断が難しく、成長と削減の両方に貢献する国内の事業が対象
- 「成長」A〜Cと「削減」1〜3の類型から1つずつ当てはまる事業が支援の候補になる
- 資料では、エネルギー供給側で約50兆円〜、需要側で約100兆円〜の投資規模が目安とされている
出典・参考
- 経済産業省「我が国のグリーントランスフォーメーション政策」
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。
よくある質問
QGX経済移行債はどんな投資を支援するのですか?
民間企業だけでは投資判断が本当に難しく、産業競争力の強化・経済成長と排出削減の両方に貢献する、国内の投資が対象です。規制・制度面の措置と一体で行い、海外で完結する投資やクレジットなど目標達成にしか効果がない事業は対象外とされています。
QGX経済移行債はどうやって返すのですか?
化石燃料賦課金と、発電事業者の有償オークションによる特定事業者負担金によって、2050年度までに償還するとされています。
Q分野別の投資規模はどのくらいですか?
経済産業省の資料では、今後10年間の官民投資の目安として、エネルギー供給側で約50兆円〜、需要側で約100兆円〜が示されています。一定の仮定を置いて機械的に算出した暫定値とされています。