系統用蓄電池・分散型リソースの最新施策|接続申込み約3,000万kWと規律の強化、DR、サイバーセキュリティ
系統用蓄電池は連系済み64万kWに対し、契約申込みが約3,000万kWに上ります。事業化の見込みが不透明な申込みへの対策として、土地の使用権原の要件化や保証金の引き上げなど接続の規律が強化されます。分散型エネルギーリソースの施策の方向性、DR、JC-STARによるサイバーセキュリティ対策、送電網の整備を整理しました。

目次
再エネが増えるほど、電気をためて必要なときに使う蓄電池や、需要の側で使い方を調整するディマンドリスポンス(DR)の役割が大きくなります。なかでも系統用蓄電池は、事業化を目指す申込みが急増し、国は接続のルールを引き締め始めました。この記事では、GX LAB 編集部が、資源エネルギー庁の資料をもとに、蓄電池をはじめとする分散型エネルギーリソースの最新施策を整理します。
再エネ政策の全体像は、再エネ主力電源化の最新政策の解説で解説しています。
この記事でわかること
- 分散型エネルギーリソースの施策の全体像
- 系統用蓄電池の導入状況と課題
- 接続の規律を強める5つの対策
- サイバーセキュリティ対策(JC-STAR)
- 送電網の整備の動き
分散型エネルギーリソースの施策
第7次エネルギー基本計画は、蓄電池を、再エネの電気をためて夕方の需要のピークなどに供給でき、すばやく応答できる調整力として位置づけています。DR は、需給のバランスを保つために需要の側から働きかける手段として重要とされています。
国は2025年12月に「分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ」を設け、需要側のリソース(家庭用・業務産業用蓄電池、ヒートポンプ給湯機など)と、供給側のリソース(系統用蓄電池、再エネ併設蓄電池など)を合わせて検討しています。どちらも、再エネの大量導入に必要な柔軟性を提供するという共通の価値を持ち、サイバーセキュリティやビジネスモデルの確立など共通の課題も多いためです。
需要側リソース(DR)の施策
- 蓄電池などの DR に対応した機器の導入支援、IoT 化の支援
- エネファームや EV の充電器・充放電器などの DR ready 化の検討
- DR の実績、特に経済 DR の実績の把握
- DR 活用ガイドの作成など、需要家への周知
系統用蓄電池の導入状況と課題
2025年12月末時点で、系統用蓄電池の連系済みの量は64万kW、契約申込みの量は約3,000万kW です(再エネ併設蓄電池は含まない)。資料は、系統用蓄電池の課題として次の点を挙げています。
- 調整力としての活用が中心で、市場価格の差を使うアービトラージでの活用は限られている
- 系統の混雑を和らげる立地や運用へ誘導する必要がある
- 地域との共生や、長期にわたる安定した事業運営を確保する必要がある
- 迅速な系統接続を実現する必要がある
施策の方向性
- 地域共生ガイドラインの作成と、長期に電力システムに貢献する事業者を評価する仕組みの検討
- 系統接続の情報公開とノンファーム型接続の導入など
- アービトラージの活用、系統混雑の緩和、サプライチェーンの強靱化に役立つ案件などを優先して支援
- 再エネ併設蓄電池は、FIT から FIP への移行など再エネの市場統合の観点から導入を促す
FIP と蓄電池の併設は、FIP転換を検討するときのチェックポイントで取り上げています。
接続の規律を強める5つの対策
事業者へのヒアリングでは、系統用蓄電池の設置に至る見込みが不透明な接続検討や契約申込みが多数あるとされています。このままでは、再エネの迅速な接続にも影響が出るおそれがあります。そこで、事業の確度が高い案件が早く確実に接続できるよう、次の対策がとられます。
接続検討のプロセス
- 接続を希望する土地の情報をまとめた書類の提出を要件にする
- 1事業者あたりの接続検討の申込数に上限を設ける
- 工事費などが事業者の要望に合わないとわかった時点で、早めに結果を回答する
契約申込みのプロセス
- 接続を希望する土地の使用権原の提出を要件にする
- 契約申込み時の保証金を引き上げ、工事費の分割払いの初回に最低支払額を設ける
1、3、4は、再エネや系統用蓄電池を含む発電等設備の全体に適用されます(FIT/FIP を使う再エネは、すでに使用権原の書類を求められているため4は対象外)。2と5は、系統用蓄電池だけに適用されます。
サイバーセキュリティ対策
分散型電源が増えると、系統につながる機器がサイバー攻撃の入り口になるおそれがあります。国は、IoT 製品のセキュリティの水準を見える化するラベリング制度「JC-STAR」を使い、太陽光発電、蓄電池、燃料電池、風力発電を系統に接続するときに、JC-STAR の★1を取得した製品の使用を要件にすることを決めました(2025年12月と2026年3月のグリッドコード検討会で決定)。分散型電源に固有の脅威をふまえた★2以上の基準の整備も進める方針です。
送電網の整備
再エネの適地と需要地を結ぶため、地域間連系線は、今後10年程度で、過去10年間(約120万kW)の8倍以上となる1,000万kW 以上の規模での整備が目指されています。2026年3月24日には、大規模な送電線の整備計画を国が認定し、電力広域的運営推進機関が資金を貸し付ける仕組みなどを盛り込んだ電気事業法の改正案が閣議決定されました。電力ネットワークの全体像は、次世代電力ネットワークと電力システム改革の解説で取り上げています。
事業者にとっての意味
ここからは GX LAB 編集部の見立てです。
連系済み64万kW に対して申込み約3,000万kW という数字は、系統用蓄電池への期待の大きさと同時に、実現しない申込みが多いことも示しています。接続の規律の強化は、土地を確保し、事業として成り立つ計画を持つ事業者にとっては、むしろ接続が早まる追い風になり得ます。今後は、接続できるかだけでなく、地域共生やセキュリティ、系統の混雑緩和への貢献など、長く電力システムの役に立つ事業かどうかが問われていくと考えられます。
まとめ
- 蓄電池や DR などの分散型エネルギーリソースは、再エネの大量導入に必要な柔軟性を提供する
- 系統用蓄電池は連系済み64万kW、契約申込み約3,000万kW(2025年12月末)
- 土地の使用権原の要件化や保証金の引き上げなど、接続の規律が強化される
- 系統に接続する分散型電源には JC-STAR ★1の取得が求められる
- 地域間連系線は今後10年程度で1,000万kW 以上の整備を目指す
出典・参考
- 資源エネルギー庁「再エネ主力電源化に向けた今後の再生可能エネルギー政策について」(2026年6月3日、資料3)
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。
よくある質問
Q系統用蓄電池はどのくらい導入されていますか?
2025年12月末時点で、系統用蓄電池の連系済みの量は64万kW、契約申込みの量は約3,000万kWです(再エネ併設蓄電池は含みません)。一方で、事業化の見込みが不透明な申込みが多数あるとされています。
Q系統用蓄電池の接続ルールはどう変わりますか?
接続検討では、土地の情報の書類提出の要件化、1事業者あたりの申込数の上限設定、早期回答の運用改善が行われます。契約申込みでは、土地の使用権原の提出の要件化と、保証金の引き上げなどが行われます。申込数の上限と保証金の引き上げは、系統用蓄電池だけに適用されます。
QJC-STARとは何ですか?
IoT製品のセキュリティの水準を見える化するラベリング制度です。太陽光発電、蓄電池、燃料電池、風力発電を系統に接続するときに、JC-STARの★1を取得した製品の使用を要件にすることが決まりました。