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排出枠の取引市場とクレジットの使い方|上下限価格と、不足したときの未償却相当負担金

排出量取引制度(GX-ETS)では、排出枠が足りなければ市場で買い、余れば売ることができます。GX推進機構が運営する排出枠取引市場、J-クレジット・JCMクレジットの使用上限、価格の上限・下限、期限までに排出枠が足りなかったときの未償却相当負担金と罰則を整理しました。

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目次

排出量取引制度(GX-ETS)では、期限までに排出実績量と同じ量の排出枠を持っていなければなりません。足りない分をどう調達するか、余った分をどう扱うか、足りなかった場合にどうなるかは、企業の費用に直接関わります。この記事では、GX LAB 編集部が、経済産業省の資料をもとに、取引とお金にまつわる仕組みを整理します。

制度の全体像は、排出量取引制度(GX-ETS)とは?の解説で解説しています。

この記事でわかること

  • 排出枠取引市場の概要
  • 排出枠の保有と償却のルール
  • カーボン・クレジットの使い方と上限
  • 価格の上限・下限
  • 排出枠が足りなかったときの負担金と罰則

排出枠取引市場

排出枠取引市場は、GX 推進法に基づき、GX 推進機構が設置・運営します。産業構造審議会の小委員会の中間整理(案)では、2027年度秋ごろの開設を予定しています。

  • 市場の役割:取引の公正な実施、決済機能の提供、取引の数量や価格の公表など
  • 参加者:制度対象者に加え、制度対象者の依頼で取引する事業者や、クレジットなどの市場取引に一定の経験を持つ事業者(マーケットメイカーなど)
  • 市場のほか、相対取引でも売買できる

排出枠の価格は、企業が脱炭素投資を判断するうえで大切な情報になります。中間整理(案)は、韓国や EU の例から、制度開始当初は取引が少なくなるおそれがあるとし、流動性の低さによる価格の高騰を抑える方策や、過度なバンキング(排出枠の持ち越し)を抑える方策を2026年度に具体的に検討するとしています。市場の詳細や、上下限価格の手続きなどは、今後マニュアルで整備される予定です。

排出枠の保有と償却

  • 制度対象年度の翌年度の1月31日に、保有義務量と同じ量の排出枠を口座に保有する
  • 経済産業大臣は同日、保有義務量分の排出枠を口座から消す(償却)。どの排出枠を消すかは選べない
  • 排出枠は、割り当てられた年度による違いがない。前の年度に割り当てられた枠も使える
  • 制度対象外になっても、口座の排出枠は維持され、売買や、再び対象になったときの義務の履行に使える

カーボン・クレジットの使い方

排出実績量は、次の式で求めます。

  • 排出実績量 = CO2の直接排出量 + J-クレジットの第三者への移転量 − J-クレジット・JCM クレジットの無効化量

クレジットを無効化すると、その分だけ排出実績量が減り、保有すべき排出枠も減ります。反対に、自社で作った J-クレジットを他社に移すと、その分が排出実績量に加わります。

使える量の上限

排出枠の価格形成を促し、削減の動機を保つため、クレジットの使用量には上限があります。

  • 上限:各年度の実排出量(クレジットの無効化量を差し引く前の排出量)の10%
  • 使えるクレジット:J-クレジット、JCM クレジット(JCM は温対法の SHK 制度に準じる)

なお、対象かどうかの判定や、割当ての基準になる排出量を計算するときは、クレジットの無効化量を差し引きません。J-クレジットや JCM の仕組みは、吸収源・J-クレジット・JCMの解説で取り上げています。

価格の上限・下限

政府は、毎年度、排出枠の価格の上限(参考上限取引価格)と、価格の低迷時の措置の基準となる価格(調整基準取引価格)を定めます。

  • 価格が高騰した場合:排出枠の償却に支障が出ることが明らかだとして経済産業大臣が告示したときは、不足分に上限価格を掛けた額を国に納めることで、その分の排出枠を持っているとみなされる
  • 価格が低迷した場合:一定期間以上、市場価格が下限を下回るときは、GX 推進機構を通じたリバースオークションで流通量を調整し、割当基準の強化も検討する

排出枠が足りなかったとき

1月31日に排出枠が足りず、保有義務量の全部を償却できなかった場合は、未償却相当負担金を納めなければなりません。

  • 未償却相当負担金 = 排出枠の不足分 × 上限価格 × 1.1

経済産業大臣が、2月1日以降に、負担金の額と納付期限を通知します。共同届出の場合は、届け出た事業者に納付の義務がかかります。

また、届出や排出実績量の報告の義務を果たさなかった場合や、虚偽の届出などをした場合は、50万円以下の罰金の対象になります。

調達の戦略を考える

ここからは GX LAB 編集部の見立てです。

不足したときの負担金は上限価格の1.1倍のため、期限までに市場や相対取引、クレジットで調達するほうが有利になる仕組みです。一方、市場の開設は2027年度秋ごろで、当初は取引が少ない可能性も指摘されています。自社の削減、クレジットの活用、排出枠の購入を組み合わせ、早めに調達の方針を決めておくことが大切です。反対に、削減が進んで枠が余る企業にとっては、排出枠やクレジットが新しい収益源になります。なお、発電事業者には2033年度から有償オークションが導入される予定です。カーボンプライシング全体の流れは、成長志向型カーボンプライシングの解説で取り上げています。

まとめ

  • 排出枠取引市場は GX 推進機構が運営し、2027年度秋ごろ開設予定。相対取引も可能
  • 排出枠は翌年度の1月31日に保有し、同日に償却される。割り当てられた年度は問わない
  • J-クレジット・JCM クレジットは、実排出量の10%まで義務の履行に使える
  • 政府が上限・下限の価格を定め、高騰時は上限価格での支払いで義務を果たせる場合がある
  • 不足した場合は、不足分×上限価格×1.1の未償却相当負担金がかかる

出典・参考

※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。

よくある質問

Q排出枠取引市場はいつ開設されますか?
A

GX推進機構が設置・運営し、産業構造審議会の小委員会の中間整理(案)では2027年度秋ごろの開設を予定しています。市場のほか、相対取引でも排出枠を売買できます。

QJ-クレジットは使えますか?
A

使えます。J-クレジットとJCMクレジットを無効化すると、その分だけ排出実績量が減ります。ただし、使える量は各年度の実排出量(無効化量を差し引く前の排出量)の10%が上限です。

Q排出枠の価格に上限はありますか?
A

政府が毎年度、上限の基礎となる価格(参考上限取引価格)を定めます。価格の高騰などで償却に支障が出ると大臣が告示した場合は、不足分に上限価格を掛けた額を納めることで、その分の排出枠を持っているとみなされます。

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