GX産業構造とは?「GX価値の見える化」と市場創造で変わる企業の選ばれ方
GX2040ビジョンが描く「GX産業構造」と、そのカギになる6つの取り組みを解説します。CFPや削減貢献量による「GX価値の見える化」、公共調達・民間調達でGX製品が選ばれる流れが、企業にどう関わるかを整理しました。

目次
GX2040ビジョンの2章「GX 産業構造」は、GX を通じてどんな産業の姿を目指すのかを描いた章です。中でも企業に関わりが深いのが、製品やサービスの「GX 価値」を見える化し、GX 製品が選ばれる市場をつくるという考え方です。この記事では、GX LAB 編集部がその要点を整理します。
ビジョン全体の流れは、GX2040ビジョンの8つの柱で解説しています。
この記事でわかること
- GX2040ビジョンが目指す「GX 産業構造」の姿
- そのカギになる6つの取り組み
- CFP・削減実績量・削減貢献量による「GX 価値の見える化」
- GX 製品の調達を広げる国の動き(2026年8月時点)
目指す「GX 産業構造」とは
ビジョンは、1990年代以降の「失われた30年」で国内投資が停滞したことをふまえ、GX をその状況を打ち破る大きなチャンスと位置づけています。そのうえで、GX 分野の投資を通じて、次のような産業構造を目指すとしています。
- 革新技術をいかした新たな GX 事業が次々と生まれる
- 素材から製品までそろった日本の「フルセットのサプライチェーン」が、脱炭素エネルギーの利用や DX によって高度化される
また、最初から世界市場で戦うことを念頭に、スピードとスケールを追求するとしています。
カギになる6つの取り組み
ビジョンは、日本には技術があっても商業化やスケールアップが十分にできていないと指摘し、次の6つの取り組みを挙げています。
- 企業の成長投資を後押しする、企業経営・資本市場の制度改善
- 国内外の学術機関などと組んだ、イノベーションの社会実装や政策協調
- 大企業からの積極的なカーブアウト(事業の切り出し)
- GX 産業につながる市場の創造
- 中堅・中小企業の GX
- 新たな金融手法の活用
このうち「中堅・中小企業の GX」は、中堅・中小企業のGXと国の支援の解説で取り上げています。ここでは、企業の「選ばれ方」に直結する「市場の創造」を詳しく見ていきます。
「GX 価値の見える化」とは
なぜ見える化が必要なのか
脱炭素の製品は、つくる段階でコストが上がることが多い一方、その価値が価格に表れにくいという課題があります。ビジョンは、市場の仕組みだけでは需要と供給の循環が生まれにくいとして、製品やサービスの「GX 価値」を評価する取り組みを進めるとしています。
使われる指標
ビジョンが挙げている主な指標は次のとおりです。
- CFP(カーボンフットプリント):製品やサービスが、原料の調達から廃棄までに出す温室効果ガスの量
- 削減実績量:実際に減らした排出量
- 削減貢献量:その製品やサービスを使うことで、社会全体の排出がどれだけ減るか
欧州の炭素国境調整メカニズム(CBAM)や欧州バッテリー規則など、製品単位の排出量に注目する政策が海外で広がっていることも、背景に挙げられています。国は、こうした指標を投資促進策のプロジェクト選定に使うことなどを検討するとしています。
データ連携の仕組みづくり
製品の GX 価値を早く、信頼できる形で伝えるため、サプライチェーンをまたいで排出量のデータをやり取りする仕組み(ウラノス・エコシステムなど)を整えるとしています。
GX 製品が選ばれる市場をつくる
公共調達
国や自治体が先に GX 製品を買うことで、最初の需要をつくるという考え方です。ビジョンは、グリーン購入法を活用して、グリーンスチール(グリーン鉄)やグリーンケミカルなどの調達を進めるとしています。
2026年8月時点の進捗資料では、次のような動きが示されています。
- グリーン購入法で、グリーン鉄を特定調達物品に位置づけた
- 国土交通省の公共工事で、グリーン鉄を使った試行工事を2026年7月から始めた
- 建築物のライフサイクルカーボン(建設から解体までの排出)の評価制度をつくる改正建築物省エネ法が2026年7月に成立し、2028年度に制度を始める予定
民間企業の調達
ビジョンは、GX 製品を率先して調達する企業を評価し、国の支援を優先的に適用する考え方を示しています。2026年4月には、GX の需要創出などに意欲的な企業の枠組みとして「GX フューチャーリーグ」が創設され、初年度は2,689社が参画しました。
企業にとっての意味
ここからは GX LAB 編集部の見立てです。
GX 価値の見える化が進むと、製品の「CO2の少なさ」が、価格や品質と並ぶ比較の材料になっていきます。大企業が調達先に排出量のデータを求める動きは、取引先である中堅・中小企業にも広がると考えられます。
まずは自社の製品やサービスの排出量を把握し、使う電気を再エネに切り替えるなどの手段も検討しておくと、取引先からの問い合わせに答えやすくなります。再エネの調達方法は「実質再エネ」化の3つの手段、中小企業向けの宣言の枠組みは再エネ100宣言 RE Action の解説で紹介しています。
まとめ
- GX 産業構造は、新たな GX 事業の創出と、サプライチェーンの高度化を目指す産業の姿
- そのカギとして、市場の創造や中堅・中小企業の GX など6つの取り組みが挙げられている
- CFP・削減実績量・削減貢献量で、製品の GX 価値を見える化する検討が進んでいる
- グリーン鉄の公共調達や GX フューチャーリーグなど、GX 製品が選ばれる市場づくりが動き出している
出典・参考
- 内閣官房「GX2040ビジョン~脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂~」(2025年2月)
- 内閣官房 GX 実行推進室「我が国のGX政策・GX投資の進捗(参考資料)」(第17回 GX 実行会議 資料2、2026年8月26日)
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。
よくある質問
QCFPとは何ですか?
カーボンフットプリントの略で、製品やサービスが原料の調達から廃棄までの間に出す温室効果ガスの量を表したものです。GX2040ビジョンは、CFPに加えて削減実績量や削減貢献量といった指標も使い、製品のGX価値を見える化する検討を進めるとしています。
Q削減貢献量とCFPはどう違いますか?
CFPはその製品自体が出す排出量です。削減貢献量は、その製品やサービスが使われることで、社会全体の排出がどれだけ減るかに注目した指標です。たとえば省エネ性能の高い製品は、つくるときの排出があっても、使う段階で排出を減らすことに貢献します。
QGX製品の公共調達はどこまで進んでいますか?
2026年8月時点の国の資料では、グリーン購入法でグリーン鉄を特定調達物品に位置づけたこと、国土交通省の公共工事でグリーン鉄を使った試行工事を2026年7月から始めたことが示されています。2030年度以降に公共工事で本格的に活用する予定とされています。