中堅・中小企業のGX|見える化・設備の高度化・支援体制、国が示す3つの柱
GX2040ビジョンは、中堅・中小企業のGXを「見える化と目標設定」「設備の高度化支援」「支援機関等の体制構築」の3つで後押しするとしています。なぜ中小企業にもGXが求められるのか、国の支援の方向性と最初の一歩を整理しました。

目次
「GX は大企業の話で、うちには関係ない」と考えている中堅・中小企業の担当者も多いかもしれません。GX2040ビジョンは、中堅・中小企業の GX を、GX 産業構造をつくるカギの1つに位置づけています。この記事では、GX LAB 編集部が、ビジョンが示す支援の3つの柱と、企業が最初に取り組めることを整理します。
ビジョン全体の流れは、GX2040ビジョンの8つの柱で解説しています。
この記事でわかること
- なぜ中堅・中小企業にも GX が求められるのか
- GX2040ビジョンが示す、中堅・中小企業の GX の3つの柱
- 排出量取引制度で中小企業に負担を押し付けないための考え方
- 最初の一歩として取り組めること
なぜ中堅・中小企業にも GX が求められるのか
ビジョンは、中堅・中小企業の多くで GX が進みにくい理由として、次のような課題を挙げています。
- 脱炭素への取り組みが、自社の売上に直結しない
- GX を進める人材やノウハウ、資金が足りていない
一方で、ビジョンは、サプライチェーンによっては、脱炭素への取り組みが進まない企業がサプライチェーンから外されるリスクが表れ始めているとも指摘しています。取引先の大企業が排出削減に取り組むほど、その調達先にも同じ取り組みが求められるようになる、という流れです。
GX2040ビジョンが示す3つの柱
1. 見える化と目標設定
脱炭素の取り組みは、まず自社や個々の設備のエネルギー消費量・CO2排出量を算定し、見える化して、削減の計画を立てるところから始まります。
ビジョンは、中堅・中小企業が簡単に算定・見える化できるよう、省エネルギー診断の事業を充実させること、国の電子報告システムを改修することなどを挙げています。
2. 設備の高度化支援
中堅・中小企業にとって着手しやすい GX として、ビジョンは省エネルギーを挙げています。2024年版中小企業白書では、取引先から求められる脱炭素の協力の内容として、省エネルギーの取り組みが最も多かったとしています。
そのため、次のような支援を充実させるとしています。
- 省エネルギー・省 CO2 につながる設備の導入支援
- 大企業などが、取引先の中堅・中小企業と一緒に行う設備導入の支援
- GX に役立つ製品・サービスの開発や、新しい事業への挑戦の支援
3. 支援機関などの体制づくり
「何から始めればよいかわからない」「人材が足りない」という悩みに応えるため、地域で企業に働きかける「プッシュ型」の支援体制をつくるとしています。
- 金融機関や省エネルギー支援機関と連携した、地域の省エネ支援体制を全国で充実させる
- 中小企業基盤整備機構によるハンズオン(伴走型)の支援
- 地域の金融機関、商工会議所、地方公共団体、大企業などの取引先との連携
- 省エネを助言する人材の裾野を広げる、支援機関向けの講習会、脱炭素化支援の資格の認定制度の普及
あわせて、大企業と中小企業の共存共栄を目指す「パートナーシップ構築宣言」の拡大や、GX リーグに参加する企業が中小企業と連携してサプライチェーン全体の排出削減を進めることも促すとしています。
排出量取引制度と中小企業
2026年度から本格稼働した排出量取引制度で参加が義務になるのは、CO2の直接排出量が10万トン以上の企業です。多くの中堅・中小企業は直接の対象ではありません。
ただし、ビジョンは、制度の対象企業が、排出の多い工程を適切な対価なしに取引先の中小企業へ移したり、原材料のコスト上昇分の価格転嫁を拒んだりするといった事態が起こり得ると指摘しています。こうした行為がないかを政府が厳しく確認し、取引上優位な立場を利用した不当な負担の押し付けには、政府が一体となって是正に取り組むとしています。制度の全体像は、成長志向型カーボンプライシングの解説で整理しています。
最初の一歩として取り組めること
ここからは GX LAB 編集部の見立てです。ビジョンの3つの柱に沿うと、次の順に進めるのが取り組みやすいと考えられます。
- 電気・ガス・燃料の使用量を、請求書から1年分集めて把握する
- 使用量の多い設備や時間帯を見つけ、省エネ診断の活用を検討する
- 設備の入れ替えは、国の補助金や税制と組み合わせて検討する
- 地域の金融機関や商工会議所など、相談できる窓口を確かめておく
電気代の内訳を知るには法人の電気料金の考え方、使える支援策を探すには企業向けの脱炭素補助金の全体像、設備投資の税制は中小企業経営強化税制の解説が参考になります。
まとめ
- 中堅・中小企業でも、取引先から脱炭素の取り組みを求められる場面が増えている
- GX2040ビジョンは「見える化と目標設定」「設備の高度化支援」「支援機関等の体制構築」の3つで後押しするとしている
- 取引先からの要請で最も多いのは省エネで、着手しやすい GX でもある
- 排出量取引制度の負担を、中小企業に不当に押し付けることへの対策も示されている
- まずはエネルギー使用量の把握から始め、補助金や相談窓口を組み合わせて進める
出典・参考
- 内閣官房「GX2040ビジョン~脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂~」(2025年2月)
- 内閣官房 GX 実行推進室「我が国のGX政策・GX投資の進捗(参考資料)」(第17回 GX 実行会議 資料2、2026年8月26日)
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。
よくある質問
Q中小企業は排出量取引制度に参加しなければなりませんか?
参加が義務になるのは、CO2の直接排出量が10万トン以上の企業です。多くの中小企業は直接の対象ではありません。ただし、取引先の大企業から排出量の報告や削減を求められる場面は増えると考えられます。
Q中小企業のGXは何から始めればよいですか?
GX2040ビジョンは、まず自社や設備のエネルギー消費量とCO2排出量を算定し、見える化することを第一歩に挙げています。電気・ガス・燃料の請求書を1年分集めて使用量を把握し、使用量の多い設備から省エネを検討するのが取り組みやすい進め方です。
Qどこに相談すればよいですか?
ビジョンは、金融機関や省エネルギー支援機関と連携した地域の支援体制、中小企業基盤整備機構によるハンズオン支援、商工会議所や地方公共団体などとの連携を進めるとしています。取引のある地域の金融機関や商工会議所に、省エネ診断や補助金について相談してみるのも一つの方法です。