送電線の混雑による出力制御|ノンファーム型接続と日本版コネクト&マネージ
出力制御には、エリアで電気が余る「需給バランス」によるものと、送電線の容量を超えないための「送電容量制約」によるものがあります。先着優先ルール、ノンファーム型接続、想定潮流の合理化、N-1電制、再給電方式など、送電線の混雑に関わる仕組みを整理しました。

目次
太陽光の出力制御には、エリア全体で電気が余るときの制御のほかに、もう1つ、送電線の混雑が理由の制御があります。FIT から FIP への順番変更は、主に1つ目の話です。この2つを混同しないことが、出力制御のリスクを正しく見積もる第一歩になります。この記事では、GX LAB 編集部が、資源エネルギー庁の資料をもとに、送電容量による出力制御の仕組みを整理します。
出力制御の仕組み全体は、出力制御とは?の解説で解説しています。
この記事でわかること
- 需給バランスによる制御と、送電容量による制御の違い
- 先着優先ルールと、空き容量がない系統の問題
- 日本版コネクト&マネージ(想定潮流の合理化、ノンファーム型接続、N-1電制)
- 再給電方式による系統利用ルールの見直し
2つの出力制御の違い
- 需給バランス制約による出力制御:エリア全体で電気が需要以上に発電されて余るときに行う。優先給電ルールに沿って、火力の抑制や他エリアへの送電などを行ってもなお余る場合に、再エネの出力を制御する
- 送電容量制約による出力制御:送電線や変圧器に流せる電気の量には上限がある。上限を超えて電源を接続している場合、日々の運用で上限を超えるおそれがあるときに出力を制御する
2026年度以降の FIT 電源→FIP 電源への順番変更は、需給バランスによる制御の話です。ノンファーム型で接続した設備は、送電容量による出力制御を受ける可能性があり、FIP に移ったからといって、すべての制御のリスクがなくなるわけではありません。
先着優先ルール
発電事業を始めるには、発電した電気を送るための送電容量を確保するため、一般送配電事業者などに接続契約を申し込む必要があります。送電容量は、公平性・透明性の観点から、すべての電源について申し込み順に確保されます。これを「先着優先ルール」といいます。
このルールのもとでは、空き容量がない系統に新しく接続を希望する場合、必要な増強工事が終わるまで接続できないことになります。
日本版コネクト&マネージ
そこで、既存の系統の「すき間」に注目して最大限活用するため、次の取り組みが進められています。
想定潮流の合理化
これまで送電線の容量は、接続されている電源がすべてフル稼働する前提で確保されていました。実際には、すべての電源が同時にフル稼働するとは限りません。たとえば太陽光は春や秋の日中、風力は冬の荒天の日に最も多く発電するといわれます。実際の利用に近い想定で空き容量を計算する方法が、2018年4月から導入されています。
ノンファーム型接続
通常の接続(ファーム型接続)は、確保した容量の範囲内で自由に発電できます。ノンファーム型接続は、系統が混雑すると予想されるときに出力制御されることを受け入れる代わりに、空き容量がなくても、系統を増強せずに新しく接続できる方式です。
- 2021年1月13日:全国の空き容量のない基幹系統で適用開始
- 2022年4月1日以降に接続検討を受け付けた、基幹系統の電圧階級で接続する電源:空き容量の有無にかかわらず適用
- 2023年4月:基幹系統より電圧の低いローカル系統でも適用開始
ノンファーム型で接続する電源には、出力制御の指令をオンラインで受け取れる設備の導入が求められます。既設の設備を増出力して一部がノンファーム型として扱われる場合、既設のオフライン設備もオンライン化が必要になるケースがあります。
N-1電制
多くの送電線は2回線以上で、1回線が故障しても停電しないよう、平常時は一部の容量を空けています。事故が起きたときに瞬時に発電を制限(遮断)することを前提に、この空けておいた容量の一部を平常時にも使えるようにするのが「N-1電制」です。2018年10月から先行適用され、2023年4月からは費用負担を含めた本格的な運用が始まっています。
系統利用ルールの見直し(再給電方式)
先着優先の考え方のもとでは、ノンファーム型で接続した再エネより、以前から接続している石炭火力などの発電が優先されます。そこで、送電線が混雑するときに、CO2排出が少なく限界費用の安い再エネが優先されるよう、ルールの見直しが進められてきました。
- 2022年12月21日:調整電源を使って基幹系統の混雑を解消する「再給電方式(調整電源の活用)」を導入
- 2023年12月28日:調整電源以外の電源も含め、一定の順序で出力制御する「再給電方式(一定の順序)」を導入
- ローカル系統:再給電方式(一定の順序)と同様の順で混雑を解消する方式を導入
電力ネットワーク全体の増強の方向性は、次世代電力ネットワークと電力システム改革の解説で取り上げています。
事業者にとっての意味
ここからは GX LAB 編集部の見立てです。
出力制御のリスクを見積もるときは、エリアの需給による制御と、接続している送電線の混雑による制御を分けて考える必要があります。接続契約がノンファーム型かどうかを確かめ、系統情報の公開・開示も活用して見通しを立てておくことをおすすめします。FIP 転換を検討するときの確認項目は、FIP転換を検討するときのチェックポイントにまとめています。
まとめ
- 出力制御には、需給バランスによるものと、送電容量によるものがある
- 先着優先ルールでは、空き容量のない系統は増強工事が終わるまで接続できない
- ノンファーム型接続は、混雑時の出力制御を受け入れる代わりに、増強なしで接続できる方式
- 再給電方式の導入で、送電線の混雑時に再エネが優先されるようルールが見直されている
出典・参考
- 資源エネルギー庁「出力制御について|なるほど!グリッド」
- 資源エネルギー庁「2026年度 FIT・FIP制度ガイドブック」
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。
よくある質問
Qノンファーム型接続とは何ですか?
系統が混雑すると予想されるときに出力制御されることを受け入れる代わりに、空き容量がなくても系統を増強せずに新しく接続できる方式です。2021年1月から全国の空き容量のない基幹系統で適用が始まり、2023年4月からはローカル系統でも適用されています。
Q需給バランスの出力制御と何が違いますか?
需給バランスの出力制御は、エリア全体で電気が余るときに行います。送電容量による出力制御は、送電線や変圧器に流せる電気の上限を超えるおそれがあるときに行います。FIT→FIPの順番変更は、主に需給バランスの制御の話です。
Q再給電方式とは何ですか?
送電線が混雑するときに、CO2排出が少なく限界費用の安い再エネが優先されるよう、一定の順序で電源の出力を制御する方式です。2022年12月に調整電源を活用する方式、2023年12月に調整電源以外も含めて一定の順序で制御する方式が導入されました。