出力制御とは?太陽光が止められる仕組みと、FITからFIPへの見直しの全体像
出力制御は、電気が余るときや送電線が混雑するときに、太陽光などの発電を一時的に止める仕組みです。需給バランスと送電容量の2種類の制御、優先給電ルール、出力制御のルール区分、2026年度以降のFIT電源→FIP電源への順番変更まで、全体像を整理しました。

目次
- 1. この記事でわかること
- 2. 出力制御とは
- 発電を一時的に止めて、電力系統を守る
- 2つの種類
- 3. 需給バランスによる出力制御の手順
- 優先給電ルール
- 制御の公平性
- 4. 出力制御の見通しと情報の公表
- 長期見通しの公表
- 出力制御を行ったあとの公表
- 5. 出力制御の上限を決める「ルール」
- 出力制御の実施対象の拡大
- オンライン制御とオンライン代理制御
- 6. FIT 電源→FIP 電源への順番変更
- 何が変わるのか
- FIP は「出力制御の免除」ではない
- FIP 転換の広がり
- 国の FIP 促進策
- 7. FIP 制度とは(おさらい)
- 8. 事業者が押さえておきたいポイント
- まず自分の設備の「立ち位置」を確かめる
- 公表情報で見通しを立てる
- FIT のままでも影響がある
- FIP 転換は「条件つき」で比較する
- 9. まとめ
- 10. 出典・参考
太陽光発電の事業者にとって、「出力制御」は売電収入に直接関わる仕組みです。再エネの導入が進んだことで、春や秋の晴れた日中などに電気が余り、太陽光の発電を一時的に止める場面が増えています。さらに、2026年度以降、FIT 電源と FIP 電源で出力制御の順番を分ける見直しが始まります。
この記事では、GX LAB 編集部が、資源エネルギー庁の資料をもとに、出力制御の仕組みと、FIT から FIP への見直しの全体像を整理します。個別のテーマは、シリーズの各記事で詳しく解説しています。
この記事でわかること
- 出力制御とは何か、2つの種類
- 需給バランスによる出力制御の手順(優先給電ルール)
- 出力制御の上限を決める「ルール」の区分
- FIT 電源→FIP 電源への順番変更と、FIP 転換の動き
- 事業者が押さえておきたいポイント
出力制御とは
発電を一時的に止めて、電力系統を守る
電気は、使う量(需要)とつくる量(供給)を常に一致させる必要があります。このバランスが崩れると周波数が乱れ、最悪の場合は大規模な停電につながります。出力制御は、電気が余るときなどに、発電設備の出力を一時的に抑えて、電力系統の安定を守る仕組みです。
FIT・FIP の認定を受けた事業者は、出力制御の要請を受けたときに、適切な方法で協力することが遵守事項になっています。太陽光・風力の設備は、出力の大きさに関係なく、原則すべてが出力制御の対象です。ただし、10kW 未満の太陽光は、当面の間は対象外とされています。
2つの種類
資源エネルギー庁は、出力制御を次の2つに分けて説明しています。
- 需給バランス制約による出力制御:エリア全体で電気が需要以上に発電されて余るときに行う
- 送電容量制約による出力制御:送電線や変圧器に流せる電気の量の上限を超えるおそれがあるときに行う
ニュースなどで「出力制御」と言われるのは、多くの場合1つ目の需給バランスによるものです。2つ目の送電容量による制御は、送電線の混雑による出力制御の解説で取り上げています。
需給バランスによる出力制御の手順
優先給電ルール
電気が余りそうなとき、一般送配電事業者は、法令などであらかじめ決められた「優先給電ルール」に沿って、次の順に対応します。
- 火力発電の出力の抑制、揚水発電のくみ上げ運転による需要の創出、蓄電池の活用
- 地域間連系線を使った、ほかのエリアへの送電
- バイオマス発電の出力の制御
- 太陽光発電・風力発電の出力の制御
- 長期固定電源(水力・原子力・地熱)の出力の制御
水力・原子力・地熱は、出力を短時間で小刻みに調整するのが技術的に難しく、一度下げるとすぐに戻せないため、最後に抑制することとされています。つまり、太陽光の出力制御は、火力を下げる、他エリアへ送るなどの手を尽くしても、なお電気が余るときに行われます。
制御の公平性
資源エネルギー庁の「出力制御の公平性の確保に係る指針」は、同じルールで接続している事業者の間で、出力制御の機会が均等になるようにすることを求めています。必要に応じてルールごとに事業者をグループに分け、年度単位などで制御の機会が均等になるよう順番に制御します。
出力制御の見通しと情報の公表
出力制御は、事業者にとって売電収入の予見性に関わるため、指針は情報の公表についても定めています。
長期見通しの公表
一般送配電事業者は、過去の実際の気象条件などをもとに、年間8,760時間ベースで出力制御の長期見通しを算定し、少なくとも年1回更新します。今後の再エネの導入量に応じた出力制御の時間数や出力制御率も示します。たとえば「太陽光が○万kW、風力が○万kW 増えた場合、出力制御時間は○○時間、出力制御率は○%」といった形です。
ただし、指針は、長期見通しはあくまで試算値で、一般送配電事業者が上限として保証するものではないとしています。その年の電力需要や電源の稼働状況で変わるため、単年度で判断しないよう注意を促しています。
出力制御を行ったあとの公表
- 一般送配電事業者は、出力制御を行った事業者に対して、回避措置(火力などの抑制)を講じたこと、それでも供給が需要を上回ると見込んだ合理的な理由などを、書面などで示す
- 出力制御が行われた月の翌月までに、制御の日・時間帯と、時間帯ごとに制御を指示した出力を公表する
- 電力広域的運営推進機関(広域機関)も、制御が行われた供給区域、日・時間帯、制御の指令の合計、理由を公表し、出力制御が適切だったかを検証して結果を公表する
こうした情報は、出力制御の見通しを立てるときの材料になります。
出力制御の上限を決める「ルール」
太陽光や風力の設備には、接続した時期などによって、無補償で出力制御に応じる範囲を決めた「ルール」があります。
- 旧ルール:年間30日まで
- 新ルール:年間360時間まで(太陽光)。風力は年間720時間
- 無制限・無補償ルール:上限なし
2021年4月以降は、東京・中部・関西エリアを含むすべてのエリアで無制限・無補償ルールが適用されています。どのルールが自分の設備に当てはまるかは、接続契約の時期や条件で決まります。詳しくは出力制御の3つのルールの解説で整理しています。
出力制御の実施対象の拡大
旧ルールで接続した500kW 未満の太陽光は、これまで当面の間、出力制御の実施対象外とされていました。事業者間の公平性を確保するため、2022年4月から、これらの設備も実施対象とし、同じ時期に認定を受けた500kW 以上の設備と同じく30日ルールを適用することになりました。対象を広げることで、すでに対象になっている事業者や新しく接続する事業者の出力制御の日数が減り、新しい投資の予見性も高まるとされています。
オンライン制御とオンライン代理制御
遠隔で出力を制御できる機器を付けた設備(オンライン)は、手動で制御する設備(オフライン)より、実際の需給に近い柔軟な制御ができます。そこで太陽光では、オンラインの設備がオフラインの設備の分も代わりに制御し、あとで売電代金を精算する「オンライン代理制御」が、2022年4月から導入されています。仕組みはオンライン代理制御の解説で取り上げています。
FIT 電源→FIP 電源への順番変更
何が変わるのか
これまで、無制限・無補償ルールの太陽光・風力は、FIT 電源も FIP 電源も同じグループで制御されてきました。資源エネルギー庁は、2025年4月に出力制御の指針を改正し、無制限・無補償ルールを「FIT」と「FIP」に分けて、FIT 電源を先に制御し、そのあとに FIP 電源を制御することを明確にしました。
- 対象:自然変動電源(太陽光・風力)
- 開始時期:2026年度または2027年度。システム改修が終わったエリアから、準備ができ次第順次始める
- 非 FIT・非 FIP の電源の順番は、FIP 電源と同じ扱い
FIP 電源は、自ら発電計画を立て、予測の誤差に対応しながら需給に応じて発電する電源で、需給バランスへの貢献度合いが高いとされています。この性質と、電源間の公平性をふまえた見直しです。詳しくは出力制御の順番変更の解説で解説しています。
FIP は「出力制御の免除」ではない
経済産業省の資料は、この見直しにより、FIP 電源(太陽光・風力)は当面、出力制御の対象とならないとしています。ただし、余剰が特に大きい日や制御回数が多いエリアでは、FIT 電源の制御のあとに FIP 電源も制御されます。また、FIP 電源には無制限・無補償ルールが適用されます。FIP にすれば制御のリスクがなくなる、というわけではありません。
FIP 転換の広がり
経済産業省の資料によると、2025年12月末時点の FIP 認定は、新規認定と、FIT から移行した移行認定を合わせて、約6,830MW・2,647件(新規1,213件、移行1,434件)です。2024年3月時点(約1,761MW・1,199件)から、容量は3.9倍、件数は2.2倍に増えています。
資料は、2024年4月からのバランシングコストの見直しなどにより、FIP 制度の活用を検討する事業者の行動を後押しした効果が一定程度見られたとしています。政府は「将来的には全再エネ電源について FIP 移行が望ましい」という方針のもと、FIP 電源の蓄電池の活用や発電予測などへの支援を強化するとしています。
国の FIP 促進策
経済産業省の資料は、FIP 制度の更なる活用に向けて、出力制御の順番の見直しに加え、次のような事業環境の整備を進めるとしています。
- FIP 制度に関する情報開示の推進(参照価格やその諸元を、エリアごと・月単位で開示)
- FIP に併設した蓄電池の系統からの充電の拡大
- FIP に移行したあとに蓄電池を設置する場合の価格算定ルール
- 供給シフトを円滑にするためのバランシングコストの見直し
- 非化石証書の直接取引の拡大
- FIP 移行時の蓄電池設置の手続きの迅速化
- アグリゲーターと FIP 事業者のマッチングの仕組みや、関連する事業者向けの勉強会
- FIP 電源の需給調整に役立つ系統用蓄電池の導入促進
あわせて、事業者団体(太陽光発電協会)が業界としてのロードマップとアクションプランを策定しており、官民が協調して FIP への移行を進めるとしています。
FIP 制度とは(おさらい)
FIP 制度は、2022年度に FIT 制度に加えて導入された、市場と連動する制度です。
- FIT:決まった価格で電気が買い取られる。いつ発電しても収入は同じで、需要のピーク時に供給を増やす動機は働かない
- FIP:発電事業者が自ら市場などで電気を売り、基準価格と参照価格の差にもとづく「プレミアム」を受け取る。収入は市場価格に連動するため、蓄電池などを使って価格の高い時間帯に供給を増やす動機が働く
なお、プレミアムは、出力制御が起きるような時間帯の電気供給には交付されません。
事業者が押さえておきたいポイント
ここからは、資料の内容をふまえた GX LAB 編集部の見立てです。
まず自分の設備の「立ち位置」を確かめる
出力制御の影響は、設備のあるエリア、接続したときのルール、オンラインかオフラインか、ノンファーム型接続かどうかで大きく変わります。順番変更の影響を考える前に、自分の設備がどの区分に当てはまるかを確かめることが出発点になります。
公表情報で見通しを立てる
一般送配電事業者が公表する出力制御の長期見通しや、広域機関が公表する制御の実績は、エリアごとの制御の傾向をつかむ材料になります。見通しは保証ではないため、複数年の実績とあわせて見るのがよいと考えられます。
FIT のままでも影響がある
順番変更で FIP 電源が後回しになると、その分 FIT 電源が制御される確率は上がります。FIP に移らない事業者にとっても、売電収入の見通しを見直すきっかけになる変更です。
FIP 転換は「条件つき」で比較する
FIP に移ると、制御の順番では有利になる一方、無制限・無補償ルールになることや、発電予測・インバランス対応などの手間や費用が生じます。蓄電池を組み合わせるかどうかも含めて、案件ごとに比較する必要があります。確認すべき点は、FIP転換を検討するときのチェックポイントにまとめています。
まとめ
- 出力制御には、需給バランスによるものと、送電容量によるものの2種類がある
- 需給バランスの制御は、火力の抑制や他エリアへの送電などを行っても余るときに、優先給電ルールに沿って行われる
- 制御の上限は、旧ルール(年間30日)、新ルール(太陽光は年間360時間)、無制限・無補償の区分で異なる
- 2026年度または2027年度から、エリアごとに順次、FIT 電源を先に、FIP 電源を後に制御する
- FIP 認定は2025年12月末で約6,830MW・2,647件に増えているが、FIP は出力制御の免除ではない
出典・参考
- 資源エネルギー庁「出力制御について|なるほど!グリッド」
- 資源エネルギー庁「出力制御の公平性の確保に係る指針」(2026年4月改定)
- 資源エネルギー庁「2026年度 FIT・FIP制度ガイドブック」
- 経済産業省・資源エネルギー庁「再エネ主力電源化に向けた今後の再生可能エネルギー政策について」(2026年6月3日)
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。
よくある質問
Q出力制御とは何ですか?
電気が需要以上に発電されて余るときや、送電線の容量を超えるおそれがあるときに、太陽光などの発電設備の出力を一時的に抑えて、電力系統の安定を守る仕組みです。FIT・FIPの認定を受けた事業者は、出力制御の要請に適切な方法で協力することが遵守事項になっています。
Q住宅の太陽光も出力制御の対象ですか?
資源エネルギー庁によると、10kW未満の太陽光設備は当面の間、出力制御の実施対象外とされています。ただし、複数太陽光発電設備設置事業の場合は、10kW未満でもオンライン代理制御の対象になります。
QFIPに移れば出力制御されなくなりますか?
いいえ。2026年度または2027年度から、FIT電源を先に、FIP電源を後に制御する順番に変わりますが、余剰が特に大きい日や制御回数が多いエリアでは、FIP電源も制御されます。FIP電源には無制限・無補償ルールが適用されます。
Q順番変更はいつから始まりますか?
2026年度または2027年度に、一般送配電事業者の制御システムの改修が終わったエリアから、準備ができ次第順次始まります。全国一斉ではないため、設備のあるエリアの一般送配電事業者の発表で確認する必要があります。