省エネと非化石転換|エネルギー基本計画が産業・家庭に求めること
第7次エネルギー基本計画は、徹底した省エネに加え、電化や非化石エネルギーへの転換の比重が大きくなるとしています。省エネ法の改正で加わった非化石転換の枠組みと、産業・業務・家庭・運輸の部門ごとに求められる取り組みを整理しました。

目次
脱炭素の取り組みというと、再エネの発電所を増やす話が注目されがちです。第7次エネルギー基本計画は、エネルギーを使う側、つまり需要側の取り組みにも多くのページを割いています。この記事では、GX LAB 編集部が、省エネと「非化石転換」の考え方、部門ごとに求められることを整理します。
計画全体の流れは、第7次エネルギー基本計画の全体像で解説しています。
この記事でわかること
- 需要側の取り組みの基本的な考え方
- 省エネ法に加わった「非化石転換」の枠組み
- 産業・業務・家庭・運輸の部門ごとに求められる取り組み
- 企業が押さえておきたいポイント
基本的な考え方:省エネに電化・非化石転換が加わる
計画は、化石燃料の大部分を輸入に頼る日本で、徹底した省エネの重要性は変わらないとしています。そのうえで、2050年カーボンニュートラルに向けては、電化や非化石エネルギーへの転換が占める割合が、今まで以上に大きくなるとしています。
特に、エネルギー消費のうち電力以外(燃料や熱)が約7割と高く、今後は熱の需要の脱炭素化が重要になると指摘しています。
進め方は次の順番です。
- 電化できる分野は、電源の脱炭素化とあわせて電化を進める
- 電化が難しい分野は、天然ガスなどへの燃料転換に加え、水素・アンモニア・合成燃料・合成メタンや CCUS を活用する
- 対策は、CO2をどれだけ減らせるかという観点から、経済合理的なものを優先して入れる
省エネの位置づけ
日本のエネルギー消費効率は、1970年代の石油危機以降、官民の努力で4割改善し、世界的にも高い水準にあるとされています。2023年の G7広島首脳会合では、省エネが「第一の燃料(first fuel)」と位置づけられました。
計画は、中小企業が日本の温室効果ガス排出量の1〜2割を占めるとしたうえで、中小企業や家庭にとって脱炭素の「第一歩」は省エネであることが多いとしています。中小企業にとっての GX のメリットとして、光熱費・燃料費の低減、自社製品のブランド力の強化、取引先の拡充も挙げられています。
省エネ法のトップランナー制度やベンチマーク制度は、事業者の取り組み状況をふまえて、対象や指標を見直し続けるとしています。
省エネ法に加わった「非化石転換」
2022年度の省エネ法の改正で、法律の名前が「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」に改められました。主な変更点は次のとおりです。
- 省エネ法でいう「エネルギー」の定義を広げ、非化石エネルギーも対象にした
- 省エネ法の対象となるエネルギーの需要家に、非化石エネルギーへの転換の目標に関する中長期計画の提出を求めることにした
- 非化石エネルギーの使用状況などの定期報告を求めることにした
化石燃料の省エネに加えて、非化石エネルギーへの転換を促す枠組みが整ったことになります。
部門ごとに求められる取り組み
産業部門
製造業を中心に、熱の需要や製造プロセスそのものの転換が必要になるとしています。計画は、設備が高額になること、既存設備の入れ替え時期、受電設備や配管などのインフラ整備も必要になることなどを考慮して、官民一体で進めるとしています。
- 複数年の投資計画に切れ目なく対応できる設備更新の支援
- 中小企業向けに、省エネ診断の強化と、金融機関や省エネ支援機関と連携した地域の支援体制づくり
- デジタル技術でエネルギー消費量を見える化し、さらに省エネを進めるための制度面の対応
中小企業の支援体制は、GX2040ビジョンでも柱の一つになっています。中堅・中小企業のGXの解説もあわせてご覧ください。
業務・家庭部門
住宅・建築物は一度建てると長く使われるため、早めに省エネ性能を高める必要があるとしています。
- 2030年度以降に新築される住宅・建築物は、ZEH・ZEB 基準の水準の省エネ性能の確保を目指す
- 省エネ基準の段階的な引き上げを、遅くとも2030年度までに行う
- 家庭のエネルギー消費の約3割を占める給湯器の省エネや非化石転換を進める
- 断熱窓への改修や高効率給湯器の導入を支援する
運輸部門
自動車は運輸部門の CO2排出量の86%(2022年度時点)を占めています。
- 乗用車は、2035年までに新車販売で電動車100%を目指す
- 充電インフラは、2030年に30万口を目標に整備する
- ガソリンは、2030年度までにバイオエタノールを最大10%混ぜた低炭素ガソリンの供給開始を目指す
企業が押さえておきたいポイント
ここからは GX LAB 編集部の見立てです。
計画の方向性をふまえると、企業の設備投資は「省エネ性能の高い機器に替える」だけでなく、「燃料を使う設備を電気や非化石のエネルギーに切り替える」ことも視野に入れる時期に来ていると考えられます。ボイラーや乾燥炉、給湯、社用車などは、更新のタイミングが近いものから検討すると進めやすくなります。
使える支援策は、企業向けの脱炭素補助金の全体像、電気代の考え方は法人の電気料金の考え方で整理しています。
まとめ
- 徹底した省エネは引き続き重要で、今後は電化・非化石転換の比重が大きくなる
- エネルギー消費の約7割は電力以外で、熱の脱炭素化がカギになる
- 2022年度の省エネ法改正で、非化石転換の中長期計画や定期報告の枠組みが加わった
- 産業はプロセス転換、業務・家庭は住宅・建築物の省エネ性能向上、運輸は電動化が中心
- 中小企業や家庭の脱炭素の第一歩は、多くの場合、省エネ
出典・参考
- 資源エネルギー庁「エネルギー基本計画」(2025年2月)
- 資源エネルギー庁「エネルギー基本計画の概要」(2025年2月)
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。
よくある質問
Q非化石転換とは何ですか?
化石燃料を使っているエネルギーを、電化や水素、バイオ燃料などの非化石エネルギーに切り替えていくことです。2022年度の省エネ法改正で、法律の名前に「非化石エネルギーへの転換」が加わり、中長期計画や定期報告の枠組みが整えられました。
Q省エネと非化石転換はどちらが優先ですか?
計画は、徹底した省エネの重要性は変わらないとしたうえで、今後は電化や非化石転換の比重が大きくなるとしています。対策は、CO2をどれだけ減らせるかという観点から、経済合理的なものを優先して導入するとしています。
Q中小企業はまず何から始めればよいですか?
計画は、中小企業や家庭にとって脱炭素の第一歩は省エネであることが多いとしています。エネルギー使用量を把握し、省エネ診断などを活用して、使用量の多い設備から見直すのが取り組みやすい進め方です。