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第7次エネルギー基本計画とは?第6次から変わった点と2040年に向けた全体像

2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、2040年に向けた国のエネルギー政策の方向性を示したものです。第6次からの状況の変化、S+3Eの原則、GX2040ビジョンとの関係、主な政策の柱を、企業の担当者向けに整理しました。

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川沿いに高層ビルと緑が広がる未来的な都市と、手前の変電所・送電鉄塔・太陽光パネル・工場。空にはエネルギーの流れを示す半透明のグラフやアイコンが浮かび、光の線で設備がつながっている
目次

エネルギー基本計画は、国のエネルギー政策の基本的な方向性を示す計画です。2025年2月に、その7回目にあたる「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。前回の第6次(2021年10月)から3年あまりで、日本を取り巻くエネルギー情勢は大きく変わりました。

この記事では、GX LAB 編集部が、第7次エネルギー基本計画の全体像を整理します。電源構成や省エネ、再エネ、電力システムなどの個別のテーマは、シリーズの各記事で詳しく解説しています。

この記事でわかること

  • エネルギー基本計画とは何か、第7次はいつ決まったのか
  • 第6次から何が変わったのか(4つの状況変化)
  • エネルギー政策の原則「S+3E」の中身
  • 2040年に向けた政策の主な柱と、GX2040ビジョンとの関係
  • 企業の担当者が押さえておきたいポイント

エネルギー基本計画とは

国のエネルギー政策の「設計図」

エネルギー基本計画は、エネルギーをどう確保し、どう使っていくかについて、国の中長期の方向性を示す計画です。電源の組み合わせ、省エネ、資源の確保、電力・ガスの制度など、エネルギーに関わる政策の土台になります。

第7次エネルギー基本計画は、2025年2月に閣議決定されました。本文は80ページを超える分量で、福島の復興への取り組みから、2040年に向けた政策の方向性、イノベーション、国民とのコミュニケーションまでを扱っています。

3つの計画を一体で使う

計画は、同じ時期に示された「GX2040ビジョン」「地球温暖化対策計画」と一体で活用されるものと位置づけられています。GX2040ビジョンが産業構造や産業立地を含めた GX 全体の方向性を示すのに対し、エネルギー基本計画は、エネルギーの需給と供給体制を具体的に示す役割を担っています。GX2040ビジョンの全体像は、GX LAB の「GX2040ビジョンを読む」シリーズで解説しています。

計画の構成

第7次エネルギー基本計画は、次の7つの章で組み立てられています。

  1. はじめに
  2. 東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み
  3. 第6次エネルギー基本計画以降の状況変化
  4. エネルギー政策の基本的視点(S+3E)
  5. 2040年に向けた政策の方向性
  6. カーボンニュートラル実現に向けたイノベーション
  7. 国民各層とのコミュニケーション

中心になるのは5章で、省エネ、電源、次世代エネルギー、資源、電力システム、国際協力までが含まれています。

原点は福島の事故の教訓

計画は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むことが、引き続きエネルギー政策の原点だとしています。福島の復興・再生に最後まで取り組むことは政府の責務であるとし、廃炉や避難指示の解除に向けた取り組みが記されています。

計画によると、避難指示の対象人口は、2013年8月の8.1万人から、2024年4月にはおおむね9割減の8千人まで縮小しました。ALPS 処理水は、2023年8月24日から海洋放出が始まっています。そのうえで、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入し、原子力を活用し続ける場合も安全性の確保を最優先にするとしています。

第6次から何が変わったのか

計画は、第6次の策定以降、エネルギーをめぐる情勢が大きく変わったとして、次の4つの変化を挙げています。

1. 経済安全保障の要請の高まり

2022年2月のロシアによるウクライナ侵略で、世界のエネルギー情勢は一変しました。天然ガスの価格は史上最高値をつけ、日本でも電力需給のひっ迫やエネルギー価格の高騰が起きました。計画は、石油危機以来のエネルギー危機が危ぶまれる事態だったとしています。

さらに中東情勢の緊迫化も重なりました。日本は原油の9割以上を中東からの輸入に頼っており、中東の情勢悪化はエネルギー安全保障に直結します。

2. DX・GX による電力需要の増加

日本の電力需要は、人口減少や省エネで2007年度以降は減る傾向にありました。しかし今後は、データセンターや半導体工場の新設・増設、製造業の電化などで、増加に転じることが見込まれています。

計画は、十分な脱炭素電源を確保できなかったために、データセンターや半導体工場の投資機会が国内で失われることは、決してあってはならないとしています。

3. 気候変動の野心の維持と、現実的で多様な対応

欧米の主要国は、2050年カーボンニュートラルの目標を維持しながら、経済性や安定供給とのバランスをとる現実的な取り組みも進めています。G7広島サミットでは、各国の事情に応じた多様な道筋を認めつつ、ネット・ゼロという共通のゴールを目指す方針が示されました。

4. エネルギー政策と産業政策の一体化

米国のインフレ削減法や欧州のグリーンディール産業計画のように、各国は気候変動対策を自国の産業競争力の強化につなげる政策を強めています。計画は、日本が産業を国内に維持し成長できるかは、脱炭素電源を十分に確保できるかにかかっているとしています。

エネルギー政策の原則「S+3E」

計画は、エネルギー政策の要は「S+3E」の原則にあるとし、これを維持するとしています。

  • 安全性(Safety):エネルギー政策の大前提。特に原子力は、どんな事情よりも安全性を優先する
  • エネルギー安定供給(Energy Security):第一に考える。日本のエネルギー自給率は2022年度で約12.6%と、G7の中で最も低い
  • 経済効率性(Economic Efficiency):国際的に遜色ない価格でエネルギーを供給する。脱炭素化に伴うコスト上昇をできるだけ抑える
  • 環境適合性(Environment):日本の温室効果ガス排出量の8割以上はエネルギー起源の CO2。2035年度に60%、2040年度に73%の削減(2013年度比)を目指す

安全性を大前提に、安定供給を第一として、経済効率性と環境への適合を図る、という順番が示されています。あわせて、国際的な視点やサプライチェーンの維持・確保の視点も重要になるとしています。

2040年に向けた政策の主な柱

基本的な考え方

計画は、2040年の技術や国際情勢には不確実な要素が多いとしたうえで、「使える技術は全て活用する」との方針のもと、あらゆる選択肢を追求するとしています。

  • 再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入する
  • 特定の電源や燃料源に過度に依存しない、バランスのとれた電源構成を目指す
  • 再生可能エネルギーか原子力かという二項対立ではなく、両方を最大限活用する
  • 経済合理的な対策から優先して導入し、脱炭素化に伴うコスト上昇を抑える

脱炭素技術の開発が期待どおりに進まない場合(リスクケース)も想定し、LNG の長期契約の確保など、エネルギー安定供給に万全を期すことも明記されています。

2040年度の見通し

計画とあわせて、2040年度のエネルギー需給の見通しが、複数のシナリオにもとづく幅として示されました。電源構成は、再エネが4〜5割程度、原子力が2割程度、火力が3〜4割程度です。エネルギー自給率は3〜4割程度が見込まれています。数字の読み方は、2040年度の電源構成の解説で詳しく取り上げています。

政策の主な柱

2040年に向けた政策は、大きく次のような柱で組み立てられています。

  • 需要側の省エネルギー・非化石転換
  • 脱炭素電源の拡大と系統整備(再エネ、原子力、火力の脱炭素化、次世代電力ネットワーク)
  • 次世代エネルギー(水素、アンモニア、合成メタン、バイオ燃料・合成燃料)の確保
  • 化石資源の確保と供給体制
  • CO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)
  • 重要鉱物の確保
  • エネルギーシステム改革
  • 国際協力と国際協調

需要側:省エネと非化石転換

徹底した省エネの重要性は変わらないとしたうえで、今後は電化や非化石エネルギーへの転換の比重が大きくなるとしています。エネルギー消費のうち電力以外が約7割を占めるため、熱の脱炭素化が重要になるという指摘もあります。詳しくは省エネと非化石転換の解説をご覧ください。

供給側:再エネ、原子力、火力

再エネは、地域との共生と国民負担の抑制を図りながら最大限導入するとしています。

原子力は、安定供給性や技術自給率に優れ、一定の出力で安定して発電できる特長が、データセンターや半導体工場などの新しい需要にも合うとしています。安全性の確保を大前提に必要な規模を持続的に活用し、再稼働の加速に官民で取り組むとしています。次世代革新炉は、廃炉を決めた原子力発電所のサイト内での建て替えを対象に、地域の理解が得られるものに限って具体化を進めるとしています。

火力は、今の電力供給の約7割を担い、再エネの出力変動を補う調整力としても重要な役割を果たしているとしています。安定供給に必要な発電容量(kW)を維持しつつ、非効率な石炭火力を中心に発電量(kWh)を減らしていく方針です。移行の手段としての LNG 火力の確保や、水素・アンモニア、CCUS による火力の脱炭素化も進めるとしています。再エネについては再エネの主力電源化と5つの課題で整理しています。

電力ネットワークと電力システム

地域間連系線の整備や、蓄電池・ディマンドリスポンス(DR)による調整力の確保、電力システム改革の検証と見直しが示されています。電気料金にも関わる部分なので、次世代電力ネットワークと電力システム改革の解説で詳しく取り上げています。

資源の確保

LNG の長期契約、石油・LPガスの備蓄、水素の供給網づくり、重要鉱物の確保など、エネルギー安全保障に関わる取り組みも並んでいます。これらはエネルギー自給率と資源の確保策の解説でまとめています。

イノベーションと国民とのコミュニケーション

計画は、2050年カーボンニュートラルの実現にはさらなるイノベーションが欠かせないとして、革新技術の開発を進めるとしています。

また、エネルギーは日々の生活に密接に関わるため、国民一人ひとりが当事者意識を持つことが何より重要だとしています。審議会などを通じた政策立案のプロセスをできるだけオープンにし、透明性を高めること、学校教育の場でエネルギーの基礎知識を学ぶ機会を設けることなども挙げられています。

企業の担当者が押さえておきたいポイント

ここからは、計画の内容をふまえた GX LAB 編集部の見立てです。

電気の「量」と「質」が経営課題になる

計画は、脱炭素電源を国際的に遜色ない価格で確保できるかが、産業競争力に直結するとしています。工場やデータセンターを持つ企業にとって、電気を安定して確保できるか、その電気が脱炭素電源かどうかは、立地や投資の判断に関わる要素になっていくと考えられます。

省エネから電化・燃料転換へ

計画は、中小企業や家庭にとって脱炭素の「第一歩」は省エネであることが多いとしています。そのうえで、設備の入れ替え時期には、電化や燃料転換を選択肢に入れることが求められています。ボイラーや給湯、空調、車両などの更新計画を立てるときに、計画の方向性を参考にすると、将来の規制や支援策の流れに沿いやすくなります。

電気料金の変動に備える

計画は、電力システム改革で一定の成果があった一方、燃料価格の急騰による電気料金の高騰といった課題に直面しているとしています。系統の整備や電源への投資には大きな費用がかかるため、電気料金の内訳がどう変わっていくかにも目を配っておくと、コストの見通しを立てやすくなります。

まとめ

  • 第7次エネルギー基本計画は、2025年2月に閣議決定された、2040年に向けたエネルギー政策の方向性
  • ウクライナ侵略、電力需要の増加、現実的な脱炭素の流れ、産業政策との一体化という4つの変化をふまえている
  • S+3E の原則を維持し、安全性を大前提に安定供給を第一とする
  • 再エネを主力電源として最大限導入し、原子力も含めて脱炭素電源を最大限活用する
  • GX2040ビジョン、地球温暖化対策計画と一体で進められる

出典・参考

※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。

よくある質問

Q第7次エネルギー基本計画はいつ決まりましたか?
A

2025年2月に閣議決定されました。前回の第6次エネルギー基本計画は2021年10月に閣議決定されており、そこから3年あまりの間の情勢の変化をふまえて改定されました。

Qエネルギー基本計画とGX2040ビジョンはどう違いますか?
A

GX2040ビジョンは、産業構造や産業立地を含めたGX全体の長期の方向性を示したものです。エネルギー基本計画は、エネルギーの需給や供給体制の方向性を具体的に示したものです。計画は、GX2040ビジョン、地球温暖化対策計画と一体で活用されると位置づけられています。

QS+3Eとは何ですか?
A

安全性(Safety)を大前提に、エネルギー安定供給(Energy Security)を第一として、経済効率性(Economic Efficiency)の向上と環境への適合(Environment)を図るという、日本のエネルギー政策の原則です。第7次エネルギー基本計画でもこの原則が維持されています。

Q第7次では原子力の扱いは変わりましたか?
A

計画は、再生可能エネルギーか原子力かという二項対立ではなく、両方を最大限活用するとしています。原子力は安全性の確保を大前提に必要な規模を持続的に活用し、次世代革新炉は、廃炉を決めた原子力発電所のサイト内での建て替えを対象に、地域の理解が得られるものに限って具体化を進めるとしています。

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