地球温暖化対策計画とは?2035年度60%・2040年度73%削減に向けた国の計画の全体像
2025年2月に閣議決定された地球温暖化対策計画は、温室効果ガスを2035年度に60%、2040年度に73%減らす(2013年度比)ための国の計画です。新しい削減目標、国・自治体・事業者・国民の役割、主な対策とフォローアップの仕組みを整理しました。

目次
- 1. この記事でわかること
- 2. 地球温暖化対策計画とは
- 温室効果ガスを減らすための国の総合計画
- 計画が作られた背景
- 科学の知見:IPCC の報告
- 国際的な枠組みと日本の歩み
- 緩和と適応は「車の両輪」
- 企業をめぐる変化
- 3. 新しい削減目標
- 4. 日本の排出の現状
- 5. 国・地方公共団体・事業者・国民の役割
- 6. 主な対策・施策
- エネルギー転換
- 産業・業務・運輸など
- 地域・くらし
- 分野横断の取り組み
- 7. 計画の進め方:フォローアップの強化
- 8. 企業の担当者が押さえておきたいポイント
- 「排出量を測る」ことが取引の前提になっていく
- 中長期の目標と計画を持つ
- 吸収やクレジットの活用も選択肢に
- 毎年の見直しに目を配る
- 9. まとめ
- 10. 出典・参考
地球温暖化対策計画は、地球温暖化対策推進法にもとづいて国が定める、温室効果ガスの削減のための総合的な計画です。2025年2月に新しい計画が閣議決定され、2035年度と2040年度の削減目標が示されました。この目標は、パリ協定にもとづいて日本が国連に提出する「NDC(国が決定する貢献)」にもなります。
この記事では、GX LAB 編集部が、地球温暖化対策計画の全体像を整理します。部門別の目標や企業の役割、地域の取り組みなどは、シリーズの各記事で詳しく解説しています。
この記事でわかること
- 地球温暖化対策計画とは何か、なぜ改定されたのか
- 新しい削減目標(2030年度・2035年度・2040年度)
- 日本の温室効果ガスの排出の現状
- 国・地方公共団体・事業者・国民の役割と、主な対策
- 計画の進め方(フォローアップ)と、企業が押さえておきたいポイント
地球温暖化対策計画とは
温室効果ガスを減らすための国の総合計画
地球温暖化対策計画は、温室効果ガスの削減目標と、それを達成するための対策・施策をまとめた計画です。計画期間は、閣議決定の日から2040年度末までとされています。
計画は、エネルギー基本計画、GX2040ビジョンと一体で進めるものと位置づけられています。エネルギーの方向性と GX 全体の方向性は、GX LAB の「第7次エネルギー基本計画を読む」「GX2040ビジョンを読む」の各シリーズで解説しています。
計画が作られた背景
計画は冒頭で、気候変動の深刻さを示しています。
- 世界の年平均気温は、すでに工業化前と比べて約1.1℃上がっている
- 2024年は観測史上最も暑い年となり、世界の平均気温が工業化前より約1.55℃上がった。単年ではあるが、初めて1.5℃を超えたと報告された
- 日本の年平均気温の上昇は世界平均より速く、真夏日・猛暑日・熱帯夜の増加や、大雨の頻度の増加などの影響がすでに出ている
一方で、前の計画が2021年10月に閣議決定されてから3年余りで、ウクライナ侵略や中東情勢を受けたエネルギー安全保障の要請、DX・GX による電力需要の増加の見込みなど、情勢が大きく変わりました。こうした変化をふまえ、新たな目標と対策をまとめたのが今回の計画です。
科学の知見:IPCC の報告
計画は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2023年3月に公表した第6次評価報告書統合報告書の内容を紹介しています。主なポイントは次のとおりです。
- 人間の活動が、主に温室効果ガスの排出を通じて地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がない
- 1850〜1900年を基準とした世界の平均気温は、2011〜2020年に1.1℃の温暖化に達した
- 温暖化を1.5℃に抑えるには、世界全体の温室効果ガス排出量を2030年までに2019年の水準から約43%、2035年までに約60%減らす必要がある
計画は、1.5℃目標の達成に向けた取り組みは世界全体で大幅に不足しており、この10年の間にすべての部門で大幅かつ急速な削減が必要だとしています。
国際的な枠組みと日本の歩み
日本はこれまで、京都議定書の第一約束期間(2008〜2012年)で、基準年比6%削減の目標を、森林などの吸収源と京都メカニズムのクレジットを加えて8.7%減とし、達成しました。2015年に採択されたパリ協定では、各国が NDC を5年ごとに提出・更新し、次の NDC はその時点の NDC を超える前進を示すことが定められています。
日本は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2021年に2030年度46%削減の目標を示しました。2023年の COP28では、世界全体の進み具合を評価するグローバル・ストックテイクが初めてまとまり、2030年までに再エネの発電容量を世界全体で3倍、エネルギー効率の改善率を世界平均で2倍にすることなどが決まっています。今回の計画は、こうした流れの中で、2035年度・2040年度の目標を新たに示したものです。
緩和と適応は「車の両輪」
計画は、温室効果ガスを減らす「緩和策」と、気候変動の影響に備える「適応策」は車の両輪だとしています。地球温暖化対策計画が緩和策を、気候変動適応法にもとづく「気候変動適応計画」が適応策を担い、GX 政策と協調して進めるとしています。
企業をめぐる変化
計画は、企業の脱炭素経営が広がっていることにも触れています。GX リーグには、2024年度から日本の温室効果ガス排出量の5割超をカバーする700者超が参画しています。また、取引先から排出量の把握やカーボンニュートラルへの協力を求められた中小企業の割合は、2020年の7.7%から2022年の15.4%に倍増しています(中小企業白書)。
新しい削減目標
計画は、2013年度と比べた温室効果ガスの削減目標を、次のように定めています。
- 2030年度:46%削減(7.6億トン)。さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける
- 2035年度:60%削減(5.7億トン)
- 2040年度:73%削減(3.8億トン)
- 2050年:排出と吸収を差し引きゼロにする(ネット・ゼロ)
2035年度と2040年度の目標は、2030年度の目標と2050年ネット・ゼロを結ぶ直線的な経路の上にあり、1.5℃目標と整合する野心的な目標と位置づけられています。計画は、2050年ネット・ゼロに必要な技術革新や資源の供給など、不確実性は非常に大きく実現は容易ではないとしつつ、官民が予見可能性を持って、排出削減と経済成長の同時実現に向けて取り組むための目標だとしています。
温室効果ガスの種類別や、産業・家庭などの部門別の目標・目安は、部門別・ガス別の削減目標の解説で整理しています。
日本の排出の現状
計画によると、日本の温室効果ガスの排出量は2014年度以降、減少傾向が続いています。
- 2022年度の温室効果ガス排出量:約11億3,500万トン(2013年度比19.3%減)
- 2022年度の排出・吸収量(吸収を差し引いた量):約10億8,500万トン(2013年度比22.9%減)
減った主な理由として、省エネの進展などによるエネルギー消費量の減少と、再エネの導入拡大や原子力発電所の再稼働による電力の低炭素化が挙げられています。部門別の CO2排出量(2022年度、2013年度比)は、産業部門24.0%減、運輸部門14.5%減、業務その他部門23.6%減、家庭部門24.5%減です。
国・地方公共団体・事業者・国民の役割
計画は、目標の達成に向けて、すべての主体が参加・連携する必要があるとして、それぞれの基本的な役割を示しています。
- 国:多様な政策手段を動員した対策の総合的な推進、自らの率先した取り組み、国際協力の推進など
- 地方公共団体:地域の自然的・社会的な条件に応じた施策の推進、自らの事務・事業での排出削減など
- 事業者:中長期の削減目標を設定し、自社とバリューチェーン全体の排出削減を計画的に進める。製品・サービスのライフサイクル全体での環境負荷の低減など
- 国民:自らのエネルギー消費量・排出量を把握し、「デコ活」の一環として、住宅の省エネや再エネの導入、脱炭素型の製品・サービスの利用などに取り組む
国の役割について、計画は、自主的手法、規制的手法、経済的手法、情報的手法、環境影響評価など、多様な政策手法を動員して対策を進めるとしています。政府の政策全体が脱炭素と整合するよう、政策や事業の立案・実施で脱炭素を主要課題の一つに位置づけることや、地球温暖化対策を主な目的としない施策でも排出削減に配慮することも求めています。国自身も、事務・事業での排出削減を率先して進めるとしています。
各主体が役割分担を認識し、密接に連携することで、それぞれの取り組みの効果を超えた相乗効果が期待されるとしています。
事業者に求められる取り組みは、企業に求められる取り組みの解説で詳しく取り上げています。
主な対策・施策
計画の概要では、主な対策・施策が次のように整理されています。
エネルギー転換
- 再エネ、原子力などの脱炭素効果の高い電源を最大限活用する
- 移行の手段として LNG 火力を活用し、水素・アンモニア、CCUS などで火力の脱炭素化を進め、非効率な石炭火力のフェードアウトを促す
産業・業務・運輸など
- 工場などでの先端設備への更新支援と、中小企業の省エネ支援
- 半導体の省エネ性能の向上や光電融合など最先端技術の開発・活用、データセンターの効率改善
- 自動車の製造から廃棄までのライフサイクルを通じた CO2削減、物流の脱炭素化、航空・海運での次世代燃料の活用
地域・くらし
- 地方創生に資する地域脱炭素の加速(2030年度までに100以上の「脱炭素先行地域」をつくるなど)
- 省エネ住宅や食品ロス削減など、脱炭素型のくらしへの転換
- 高断熱窓、高効率給湯器、電動商用車、ペロブスカイト太陽電池などの導入支援と、国や自治体の庁舎などへの率先導入
- Scope3排出量の算定方法の整備など、バリューチェーン全体の脱炭素化の促進
地域とくらしの取り組みは、地域脱炭素と「デコ活」の解説で取り上げています。
分野横断の取り組み
- 成長志向型カーボンプライシングの実現・実行
- 循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行
- 森林、ブルーカーボンなどの吸収源の確保
- 日本の技術を使った、世界の排出削減への貢献(AZEC の枠組みなどを基礎に、JCM や都市間連携などの協力を広げる)
吸収源や J-クレジット、JCM については吸収源・J-クレジット・JCMの解説で、CO2以外の温室効果ガスの対策はメタン・フロンなどの対策の解説でまとめています。
計画の進め方:フォローアップの強化
計画は、将来の電力需要や脱炭素技術の開発・実装の不確実性が大きい中で、2050年ネット・ゼロに向けた直線的な経路を着実に歩むため、対策の柔軟な見直しが欠かせないとしています。
- 温室効果ガス別の目標や部門別の目安、それを達成するための措置の目標は、地球温暖化対策推進本部が毎年行うフォローアップの中で、体系的な整理と具体化を図り、柔軟に見直す
- 進み具合や具体化が遅れている項目を確認し、深掘りや項目の入れ替えなどの見直しを柔軟に進める
企業の担当者が押さえておきたいポイント
ここからは、計画の内容をふまえた GX LAB 編集部の見立てです。
「排出量を測る」ことが取引の前提になっていく
計画は、事業者に、製品・サービスのライフサイクル全体での排出量(カーボンフットプリント)や削減量の把握を求めています。取引先から排出量の把握を求められる中小企業の割合が倍増していることからも、自社の排出量を測って説明できることは、これからの取引の前提になっていくと考えられます。
中長期の目標と計画を持つ
計画は、事業者に中長期の削減目標を設定し、計画的に削減を進めることを求めています。2030年度・2035年度・2040年度という国の目標の時間軸を参考に、自社の設備更新の時期と合わせた計画を立てておくと、補助金などの支援策も活用しやすくなります。
吸収やクレジットの活用も選択肢に
計画は、森林やブルーカーボンなどの吸収源の確保や、J-クレジット制度の活性化、JCM の推進も進めるとしています。自社での削減を優先したうえで、削減しきれない分を J-クレジットで埋め合わせることや、自社の省エネ・再エネの取り組みをクレジットとして価値に変えることも、企業にとっての選択肢になります。
毎年の見直しに目を配る
対策は毎年のフォローアップで見直されるため、制度や支援策の中身も少しずつ変わっていきます。自社に関わる分野の動きを定期的に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
- 地球温暖化対策計画は、2025年2月に閣議決定された温室効果ガス削減の国の総合計画
- 2013年度比で2030年度46%、2035年度60%、2040年度73%の削減を目指し、2050年ネット・ゼロにつなげる
- 2022年度の排出・吸収量は2013年度比22.9%減と、減少傾向が続いている
- 国・自治体・事業者・国民のすべてに役割があり、事業者にはバリューチェーン全体での削減が求められる
- 対策は毎年のフォローアップで柔軟に見直される
出典・参考
- 環境省「地球温暖化対策計画」(2025年2月18日閣議決定)
- 内閣官房・環境省・経済産業省「地球温暖化対策計画の概要」(2025年2月)
※ 本記事は編集部が投稿した当時の情報に基づきます。制度の内容は変更される場合があります。最新の情報は各省庁の公式ページをご確認ください。
よくある質問
Q地球温暖化対策計画とは何ですか?
地球温暖化対策推進法にもとづいて国が定める、温室効果ガスの削減目標と、それを達成するための対策・施策をまとめた総合的な計画です。新しい計画は2025年2月18日に閣議決定され、計画期間は2040年度末までです。
Q新しい削減目標はどのくらいですか?
2013年度と比べて、2030年度に46%(さらに50%の高みに向けて挑戦)、2035年度に60%、2040年度に73%の削減を目指し、2050年のネット・ゼロにつなげます。この目標はパリ協定にもとづくNDCとして国連に提出されます。
Q日本の排出量は減っているのですか?
2014年度以降、減少傾向が続いています。2022年度の温室効果ガス排出・吸収量は約10億8,500万トンで、2013年度比で22.9%減です。省エネの進展などによるエネルギー消費量の減少や、電力の低炭素化が主な理由とされています。
Q企業には何が求められていますか?
計画は事業者に、中長期の削減目標を設定し、徹底した省エネや脱炭素電源の利用などで、自社とバリューチェーン全体の排出削減を計画的に進めることを求めています。製品・サービスのライフサイクル全体での排出量の把握や情報提供にも努めるとしています。